ここ20年近く、米国企業の経営の短期指向化は、ますます加速するばかりである。
米国では、企業は株主のものという考えが浸透しており、株主の利益につながる経営が唯一かつ絶対の経営目標とされる。
その株主が自分たちの利益最大化に走ると、どうなるか? 10年20年先の企業価値の高まりを待って、大きな実りを手にしようなんて、誰も考えない。
できるだけ短期間に、できるだけ多くの投資収益を確保しようと、経営者に圧力をかける。
それが、経営者に短期指向の経営を強いることになる。もたもたしていたら、即座に経営者の首を据え変える。
そういった株主たちの短期利益最大化志向を代弁しているのが、アクティビストとか投資ファンドである。
代弁させるだけではなく、年金や金融機関などは恰好の運用先として、積極的に資金を預ける始末だ。
ちなみに、世界最大の投資ファンドである米 KKR は600兆円を超す運用資金を擁している。 日本経済の規模を軽く上回る巨額資金を背に、企業に短期利益の追求と株価上昇を迫っているのだ。
こういった流れに企業は、なす術を知らない。 短期指向の経営を良しとしない経営者は、次々と首になっていく。 代って、巨額の報酬目当てのプロ経営者(?)とやらが跋扈することになる。
この流れが続くと、米国企業は短期の利益追求と株価上昇要求に追いまくられて、どんどん弱体化していく。
なにしろ、長期視野でしっかりと研究開発や設備投資をしておこうなんて考えは許されない。 5年や7年は株価が低迷しようと、10年先を見越して先行投資を断行するなんて、株主が絶対に認めない。
それよりも、企業の買収や事業部門の切り売りで、目先の利益と株価上昇を狙う経営が歓迎される。
企業を部門ごとにばらして、他とつなぎ合わせたりの積木細工をもって、プロの経営と評価されるわけだ。
年金など大株主の短期利益追求圧力でもって、マネー資本主義に走るのは当事者たちの勝手である。
しかし、その流れで米国の企業そして資本主義が弱体化していくのなら、極めて残念なことである。
なぜなら、短期指向の企業経営は利益の刈り取りや略奪が中心となり、長いめでみると社会や経済基盤を窮乏化させることにつながっていくのだから。
日本では、われわれ長期投資家がどんどん力をつけていって、年金などの短期利益志向に対するカウンター勢力となっていこう。
時間をかけて作物を育てるように、企業を長期視野で応援していき、経済や社会の基盤を強化するのだ。 それでもって、永続的な発展を皆で求めようではないか。