今日の日経新聞にもあったが、世界的なETF (株式上場投信)の大流行には警戒すべき段階に入ってきたようだ。
株式市場の平均株価に同調させようとするインデックス運用に次いで、日中の平均株価の値動きにおいても売買益を稼ぎ出そうとする ETF 投資は、年金など機関投資家に重宝がられている。
なにしろ運用コストが従来の運用よりも桁違いに安い。 すべてコンピュータがやってくれるので、リサーチコストもかからないし、高報酬のファンドマネジャーを置く必要もない。
加えて、平均株価に勝てないヘボ運用者が世界中にあふれている。 それだったら、インデックス運用や ETF 投資の方がずっとマシだろうというのが年金などの主張である。
現に、世界の年金など金融機関は競うようにしてインデックス運用ファンドや ETF 専用ファンドに資金を預けている。
その残高が多くなるにつれて、株式市場における株価形成を大きく歪める悪影響を及ぼし始めている。
株式市場の大事な機能は、時代適応力に欠いた企業に退出を促すところにある。 誰も買わなくなれば、株価は大きく下落し、その企業の信用力や社会的存在理由を失う。
ところが、インデックス運用や ETF 投資では平均株価を投資対象とするから、上場しているすべての企業をあまねく買おうとする。
当然のことながら、玉石混交お構いなしの運用となり、ダメ企業は淘汰されることなく存続してしまう。
この傾向が続くと、株価形成も市場機能も大きく歪められた状態が「正常」とみなされるようになっていく。
つまり、年金など金融機関の株式運用の質がどんどん劣化してしまう。 そのうち大きな暴落相場に遭遇したりすると、彼らの運用全般が酷い成績悪化でのた打ち回ることになる。
表題に、「株式市場は自滅の方向?」と書いたが、自滅するのは玉石混淆の運用にのめり込んでいる年金など金融機関の方である。
株式市場は何事もなかったように再生していく。 なぜなら、われわれのような企業を選別する本格派の長期投資家はビクともしないし、こちらに出番が回って来るだけのことなんだから。
もちろん、世界の運用マネーもわれわれのような本格派の方へ向かい出す。