先週は、金・土・日と3日間、イタリアへ送り込むオペラ歌手の公開オーディションを、東邦音大の文京キャンパスをお借りしてやった。
46名の応募者の中から、4名の最終選考に残った人たちと、5名の次点が決まった。
歌唱力や技量そして舞台映えなどについては、イタリアから招聘した公式審査員の厳しい判断に委ねている。
おもしろいのは、一次そして二次スクリーニングを経ての面接。 そこからは、主催者である我々が前面に出る。
こちらとしては、世界に大きく羽ばたいていってくれるだろうオペラ歌手を、研修生としてイタリアへ送り出したい。
世界中の人々に愛され、圧倒的な人気を勝ち獲る超一流ともなれば、芸術性の高さのみならず人間性においても素晴らしくなくてはならない。
その点において、歌うことの自己満足に留まっている人達と、自分は何のために歌いたいのだろうかを常に自問自答している人とは、まったく違ってくる。
歌うのが好きなのは絶対条件である。 だからといって、ただただ歌の技量さえ高めれば良いのではない。
それだけでは、何かが欠けている。 それも、決定的な何かが。 その自覚をもって音楽修行に励んでいる本格派たちが、すくなからずいる。
まさに、ひたすら儲かればいい、お金が殖えればいいで投資している人達と、われわれ長期投資家との違いだ。
今年で公開オーディションは4年目になるが、第二次スクリーニングの合格者面接では、毎回そのあたりを徹底的にチェックしている。
そこで、かなりの人間が振るい落とされる。 歌のレベルは高いけど、ただ歌っているだけといった自己陶酔型は、残念ながらそこまでだ。
ここまで17名のオペラ歌手をイタリアへ送り出しているが、彼ら彼女らは本場の舞台でずっと自問を続けさせられているはず。 なんでこうも歌いたいのか、何のために歌っているのかと。
われわれの長期投資もそうだ。 やはり、世の中のために、より良い社会のために、お金に働いてもらってこそ、お金の価値は高まる。
皆に喜んでもらって、ありがとうといって戻ってくる、それが投資のリターンというものである。