日本のような成熟経済において、長期投資の果たす役割は大きく、かつ果てしなく広がっていく。
そのところを、今日は再確認しよう。 成熟経済で一番の問題は、成長率がストーンと下がること。
それで、給与所得は伸び悩み個人消費は落ち込んでいき、経済全体が縮小均衡の道をたどることになる。
この20数年、日本経済はずっとデフレ現象に悩んできたが、それも縮小均衡の流れに沿ったものだ。
どうしたら、この悪循環を断ち切れるのか? これまでと同じ考え方では、絶対に無理である。
なにしろ、もう国民の間で家電など耐久消費財が行き渡り、買い替え需要が中心となってしまっている。
国全体で買い替え需要が主体となれば、かつて高度成長期のような新規需要の爆発が影を潜め、企業の設備拡大意欲はみるみる減退していく。
もちろん、食材やトイレタリーなど生活必需品に対しては、高水準の消費がずっと続く。 それでも、個人消費全体でみると、伸びが鈍くなる。
それが企業活動を低下させ、経済成長率を引き下げてしまうことになる。 成熟経済とはそういうことだ。
この悪循環を断ち切るには、国民が敢えてお金をつかうことしかない。 なにしろ経済の規模は、お金のつかわれている量と、そのスピードとの掛け算なのだから。
そこで登場してくるのが、長期投資である。 成長率が鈍り、給与所得が伸びなくなっているのだから、お金にも働いてもらう必要がある。
お金に働いてもらうとなれば、作物を育てるように将来の実りを期待するのが、先ず第1にくる。 それが、長期投資というものだ。
長期投資の実践については、いつも書いている通り。 今日は、お金に働いてもらう、その第2について書いてみよう。
その第2は、文化・教育・芸術・スポーツ・技術・寄付・ NPO ・ボランティアなどに、どんどんお金をつかうことだ。
余ったお金は「とにかく預貯金に」としてきた、これまでの価値観を思い切って捨て去ろう。
預貯金に置いておくのではなく、お金に働いてもらう一環として、「心の贅沢」や「気持ちの満足」という新しい消費スタイルを高めていく。
趣味にお金をつかうのは、そう躊躇しない。 その延長線上で、新しい消費スタイルというものを個人個人で高めていくのだ。
そういったお金のつかい方が、まわりまわって新しい産業を生み出し、雇用や成長率を高めることになる。
こちらも長期投資と同じで、日本全体がすぐ動くわけではない。 わかった人から、どんどんはじめていこう。
時間が経てば、やっていた人とやらなかった人とでは、大きな差がついてしまう。 その差をみて、やらなかった人たちも慌てて動き出す。 気がついたら、日本全体が動き出していたということになる。
いま成熟経済日本は、まさにその過程にあるのだろう。 われわれは長期投資で先導してきた。
ここからは、第2の「心の贅沢」や「気持ちの満足」という、新しい消費スタイルでも、日本を先導していこうではないか。