昨日、ある大学の3年生を中心に講義をした。 彼ら彼女らが一番の関心を持っているのは就職に関してのことだろうから、その辺りから話をスタートさせた。
最初に切り出したのは、「大学生の就職先希望ランキングを見ると、いつもその時点でピークを打ちつつある業種が上から順に並んでいる」という、歴史的な事実。
ひと昔前から振り返ってみると、石炭・繊維・造船・機械・家電・自動車・コンピュ-タ・金融へと、大学生の人気トップ業種が移り替わってきた。
ここ数年すごい人気を集めているのがITや金融関連で、産業としても今後ますます発展拡大していくかに思える。 それが故に、安定的な就職先として学生やその家族が注目するのは、ごく自然なことだろう。
この「安定的な就職先」を求めようとする願望は、驚くほど根強いものがある。 その典型が、地方公務員になりたいとか、地銀や郵便局に勤めたいという声が地方では圧倒的なことだ。
そういった安定第一の就職先判断が、これから社会へ入って行こうとする学生の人生に吉と出るか凶と出るかは、30年40年たった後でしかわからない。
では、長期投資の観点からみてみようか。 われわれは、いま時流に乗っているからとか人気があるから、その流れに乗ろうという感覚は薄い。
それよりも、どんな経営をしている企業かを個別にリサーチして、ここは面白そうだ将来が楽しみだの視点から選り分ける。 したがって、どんなに人気のない業種だって一向に構わない。
たとえ古い産業でも、地道な経営で着々とシェアを伸ばしている企業というのは、派手さはないが意外と安定している。 そういった企業とともに人生を歩んでいく図式は、安定志向の学生たちに就職先の選定で一つのヒントとなる。
次に押さえておきたい点は、成熟経済では企業間の優勝劣敗と適者生存が激しく問われることだ。 企業の栄枯盛衰が顕著となるから、長期投資家ならずとも個別企業の経営をしっかりチェックしなければならない。
ただ、学生にそこまでの企業リサーチを求めるのは酷である。 であるならば、自分自身が適者生存の道を進んでいくことだ。 就職先の企業がどうなっても、周りからお呼びがかかるほどの実力をつけておけば、いくらでも生きていける。
それには、こんな仕事をやってみたいと思えるかどうかの視点で、面白そうな企業に先ずは就職する。 大企業でなくても一向に構わない。
その就職先で、同期の2倍できれば3倍の働きを、3年ぐらい続ければすごい実力がつく。 その過程で、放っておいても社内あるいは社外から注目を浴びるようになる。
いまどき、それだけ迫力のある若人にはめったにお目にかからない。 ひとたび、あいつは仕事ができるといわれるようになったら、そこから先は楽である。
そう、将来の安定も就職先の企業に求めるのではなく、自分の意思と努力でもって自分自身に築いていくのだ。
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