運用というビジネス、その盲点

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 はるか遠い昔から、お金を増やしたい人のための運用ビジネスが、出ては消え出ては消えしてきた。 なぜ、出ては消え出ては消えを繰り返しているのかというと、どこもそう長続きしないからだ。

 それはそうだろう。 お金を運用して顧客の期待に応えるだけの成績を、マーケットで30年50年と出し続けるのは、そう簡単な話ではない。

 もちろん、上手く相場をとらえて一時の成功を収めることは、いくらだってあり得る。 世の投資成功者の大半は、ビギナーズラックで当てただけのこと。

 しかし、再現性のある投資運用手法を確立するとなると、もう不可能に近い。 なぜなら、時の経過とともにマーケット参加者はどんどん入れ替わっていく。 また、IT やらコンピュータやら新しい技術を駆使した投資家も、次から次へと登場してくるのだから。

 投資家の方も、より高い運用成績を叩き出してくれるであろう投資手法やら、最近めきめきと評価を高めている運用会社に眼を奪われがちとなる。

 それで、多くの運用会社は時代の流れとともに、自社の投資手法をどんどん変えて顧客資産獲得を図っている。 運用成績を積み上げて顧客資産が集まってくるのを待つのではなく、顧客資産を集めるために運用手法を変えていっているのだ。

 昔、オランダでは年金などを運用する方も、運用を期待する国民も年6%ぐらいの成績を挙げれば、もう十分としてきた。 それで、ふたつの大きな運用会社はゆったりどっしりとした長期投資で世界に名をはせていた。

 ところが、あれだけ名声を博した長期運用会社が、いつの間にかヘッジファンド的な存在に変身してしまっている。 オランダの国民が年6%ではつまらない、もっとすごい成績を出せと迫ったのかどうかは知らないが、信じられない変わり様である。

 ここで辛いのは、大体からして運用ビジネスというものが、顧客資産を預かることからはじまるというところにある。 そして、顧客のニーズは時代とともにどんどん移り変わっていく。

 たとえば、年20%の成績を出せとか、ヘッジファンドが流行っているからその手法も取り入れてくれとか、いろいろ要求してくる。 それに対応しないと、お金を預けてくれないから商売あがったりとなる。

 まあ、そういった考えをし始めたら、その運用会社は終わりである。 もはや運用会社ではなく、運用という看板を背負った資金集めのマーケティング会社になり下がってしまう。

 いつも書いているように、運用ビジネスとはSmall is beautiful の世界である。 できるだけ小ぶりの組織にしておけば、運営コストもそうかからないから、無理して顧客資産を集めなくてもやっていける。

 つまりは、自社が得意とする運用哲学を投資手法を守り育てながら、そこそこの成績を上げ続けられることになる。 そして、じっくりと大きな運用会社に成長していく。

 さわかみファンドが目指しているのも、まさにその方向である。 出ては消えの他社とは違って、50年でも100年でも長期投資を続けなければ、お客様に申し訳ない。

 皮肉なことに、さわかみファンドのような資産規模でこれだけの成績を出しているのは、他にほとんどないといっていい。 しかし、うちは資金集めの営業をしないから、それが世の中になかなか伝わらない。 これも、運用ビジネスの難しいところである。