長期投資と映画とオペラ

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 今週に入って電車がやたらすいているが、今日は最高にガラガラ。 皆さんお盆で里帰りか、家でゆっくりしておられるのだろう。 それとも夏休みで海外旅行か。

 まあ、今日は軽めの話題を取り上げましょうかね。 さわかみグループは、本格的な長期投資を日本に広めていこうという挑戦を引っ提げた投信ビジネスから始まったが、いまや活動は相当広範囲になってきている。

 どれも、長期投資をベースとして良い世の中をつくっていくという方向は共有しているが、いろいろなご縁から思いもよらない展開となってきている。

 そのひとつが、芸術性の高い映画を作ってしまったこと。 たまたま音楽好きで時折コンサートに行っていて、デビュー仕立ての韓国人テノール歌手にこれはすごいと強い印象を受けた。 その彼があれよあれよといっている間に世界のトップにまで上り詰めた。

 すごいことになってきたぞと興奮している間に、とんでもない悲劇が彼を襲った。 甲状腺がんが発症して手術を余儀なくされたことだ。 ドイツでがんの摘出をしたはいいが、声帯の筋肉と横隔膜の一部機能を失った。 オペラ歌手生命は絶たれた。

 自分には歌しかない、なんとしても舞台に戻りたい。 彼を発掘した日本の音楽プロデューサー輪嶋さんや日本のファンは、もう一度彼のすごい歌を聴きたい。 ふたつの思いが輪嶋さんをして世界中を駆け巡らせ、最後の最後に京大名誉教授である一色先生に手術をお願いすることになった。

 最初の手術では、あごの筋肉を取り出してきてそれを声帯に結び付ける。 もう自分では動かなくなった声帯ではあるが、あごの筋肉を鍛えることで声帯を振るわせて音を出せるようにする。 声が出るようになったので、彼ベーさんは猛特訓を重ねて出せる声量を上げていった。

 相当に大きな声が出せるようになったところで、2度目の手術。 今度はテノールの音域で声を出せるように、あごの筋肉の縛りなおしだ。 手術室で声を出したり歌ったりしながら、横にいる輪嶋さんのアドバイスを下に、一色先生はあごの筋肉の微調整を数時間にわたって進めてくださった。

 それから数年、すさまじい努力を続けて彼は復活した。 横隔膜をやられ完全に機能委縮してしまった右の肺も、ほとんど元の状態にまで戻ってきた。

 舞台に戻れた喜びは、ずっと応援してきてくれた輪嶋さんや日本のファンの前でということで、ベーさん復帰後初のコンサートは彼も我々も涙また涙となった。

 すごい実話だ、ドキュメンタリー映画にできないかということで、日韓共同の映画製作プロジェクトが立ち上がった。 いざ始めたら、できるならば芸術性の高いものにしようという声が上がってきて、当初の予算はたちまち底をついた。

 本番ロケを前にして、もうダメだ続けられないとなった。 打ち切りもやむを得ないとなったギリギリで、さわかみグループは判断した。 残りの製作費は、といってもここからが本番で一番お金がかかることになるが、さわかみグループ会社ソーシャルキャピタル・プロダクションが出した。

 とんでもないことになったが、この感動ストーリーをできるだけ多くの人々に伝えたいという思いで、どうせなら最高のものにしてくれと監督や関係スタッフと話した。

 そして、こちらが言うのもなんだがすばらしい映画ができた。 10月11日から全国の主要映画館で公開され、多くの人々にすごい実話がすごい芸術作品になったのを鑑賞してもらえる。

 お金をまわすことで、すごいことができてしまうのだなと、あらためて実感させられる。 そう思っているうちに、まったく別のご縁で、さわかみオペラ芸術振興財団というものを発足させることになった。 こちらも書き出すと長くなるので、日を改めて紹介しよう。