お金は追いかけない

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 長いこと投資運用の世界で飯を食ってきて、つくづく思うことがある。 それは、お金を殖やす人と殖やせない人とのあいだには、おおきな違いがあるということだ。

 一時すごいぼろ儲けをした人が、しばらくするとあの大金どこへ行ってしまったのだろうといったケースが、投資の世界ではもうしょっちゅうである。 まさに、濡れ手に粟の大金は身につかずだ。

 それでも不思議なことに、多くの投資家は濡れ手に粟の大金を求めてやまない。 どの株を買ったら儲かるだろうからはじまって、公的年金の日本株投資比率引き上げで株価はどのくらい上がるのだろうまで、どれもこれも儲かりそうな流れに乗ろう乗ろうが見え見えである。

 一般の生活においては当然のことだが、投資の世界でもそう簡単に儲かるはずがない。 なんとなれば、皆が儲けよう儲けようと眼を血走らせているのだ。 また、他の人間に儲けられてたまるかと、誰もがしっかりとガードを固めている。 その間隙を縫うように、自分だけすいすいと儲けの道を抜けていけるなんて、妄想の世界でしかない。

 こんな当たり前のことが、ほとんどの投資家にはコロッと抜け落ちている。 個人だけではない、機関投資家も同じである。 彼らも朝から晩までやっているじゃない、どうリスクをコントロールしながら売買益を最大化していくかと。

 運用のプロを自認する彼らがどういおうと、どうぞご自由にである。 投資の技法や運用テクニックを高めて、より良い成績を積み上げるとか、なんとでもいえる。 それなのに、現実の成績は平均株価と大差ないではないか。 むしろ下回っているケースの方が多い。

 そもそも、自分だけ儲けられると思う方が間違っている。 世の中、そんなに甘くはない。 経済も人間社会も、先ずは皆に喜んでもらうことだ。 皆が喜んでくれて、ありがとうといって戻ってくるのが報酬である。

 お金を殖やせる人と、殖やせない人との違いがここにある。 自分だけうまいこと儲けようなんて考えないことだ。 それよりも、どうすれば皆に喜んでもらえるかを、とことん追求しよう。

 たとえば、暴落相場や株価急落時は企業を応援すべく株を買おうと、われわれはいつも主張している。 それは、一刻も早く現金を手にして市場から逃げ出したいという人たちに、どうぞといって現金を渡してやることだ。 どんな理由であれ、売りたかった人達は大喜びである。

 それだけではない。 経済の現場から資金が引き揚げていき、経済活動全般が縮小均衡に陥るのを阻止する働きもする。 これは人々の生活に直結し、まさしく皆が喜んでもらえる、正真正銘の投資行動である。

 世の中よくしたもので、経済状況や投資環境が上向いてくれば、買いたい人たちが戻ってくる。 そこでは応援を彼らに任すべく、われわれは保有株を少しずつ売り上がっていく。 その結果として、大きな投資収益をいただけることになる。 これらのどこにも、人を泣かせて自分だけ儲けるなんて身勝手さはない。

 そういった投資を、ゆったりと続けていく。 安く買っては高くなって売るを繰り返している間に、一つ一つの投資収益が複利効果を生んで、大きな資産が積み上がっていくわけだ。 お金を殖やせる人って、こんなイメージである。

 さわかみファンドが提唱する本格的な長期投資とは、まさにこの世界をいう。 お客様からお預かりしている資金は一線の無駄もなく、企業を応援し経済活動を活発化させる方向で、しっかり働いてもらっている。

 皆に喜んでもらって、いただける報酬(投資収益)が複利効果を生んで、気がついたら大きな資産となっている。 さわかみファンドという長期投資船に乗り込んで一緒に長期航海をしている間に、大きなファミリーアセットを積み上げる方々が続出することになるのだろう。