長期投資は国語と鈍で

Browse By

 今日のタイトルでピンとくる人は、あまりいないと思う。 われわれと相当に長いお付き合いの方々なら、”おっ、久しぶりだな” と反応してもらえるはず。

 先ず、国語からいこうか。 一般的に投資というと、数字やら統計データやらが前面に出てくる。 経済の成長率がどうのとか、企業の業績がこうのとか、割安だ割高だと、数字や指標のオンパレードである。

 できるだけ客観的で適切な投資判断をしたい、それには数字や指標を使いこなすことが第一歩である。 そう考えるのは、投資家の誰もに共通するところだろう。

 とりわけ機関投資家は顧客に説明したり報告しなければならない。 その時に数字データを抜きにしてでは、信ぴょう性に欠ける以上にプロとしての能力を疑われてしまう。

 ここで、致命的な問題が発生する。 それは投資が将来に向けて資金を投入するということ、そして将来なんてものは不確実であり数字や指標を使ったところでアバウトになりかねないということだ。 過去の分析はいくらでも精緻に数値化データ化できようが、こと将来に関してはアバウトになるのはいた仕方がない。

 となると、いかに将来を読み込んでいくかが大事で、それは数字ではなくむしろ国語の世界である。 さわかみ投信の運用リサーチでは、いつも広く深く遠く考えることを絶対の心掛けとしている。 調べるにあたっては数字やデータを重視するが、その上でどれだけ広く深く遠く考えるかが問われる。

 考える中でも、推と論を駆使する。 推とはイマジネーションであり、できるだけ柔軟かつしなやかに将来をイメージする作業だ。 論とは、しなやかに伸ばしたイマジネーションを、可能な限り論理や数字で押えてみる作業であるが、将来のことだからどうしても不確定なものにぶち当たる。

 その不確定なものを乗り越えるには、どうしても読みという作業が欠かせない。 それが、国語の世界ということであり、投資リターンの源泉ともなるのだ。

 では、鈍とは? 長期投資は大きな読み込みをしたものに対し、骨太に行動するのが基本である。 日々の小さな値動きに振り回されることなく、どっしりと構えて大きな流れに乗っていく。 目先の経済事象に過剰反応しない、それを鈍という。

 もちろん、将来に向けて広く深く遠く読み込んでいるからこそ、最近の大幅下げに直面しても、どっしりとした長期投資ができるというもの。

 まあ、国語と鈍ということをじっくり考えてみてください。