消費税の引き上げは増税だから絶対反対という声が多い。 たしかに増税に違いはないが、きちんと考えなければならないことがある。 それは直接税と間接税との違いである。
一国の経済が高度成長している間は、企業はもちろん国民全体の収入も順調に増加する。 したがって、法人税や個人の所得税つまり直接税課税で、国や地方自治体は安定的な税収入を確保できる。
自分が前から言っている、経済の成長発展段階では、企業も個人も皆が ”右肩上がり成長の三角形” の中にあって、落ちこぼれというものがほとんどない。 ある程度の所得格差の広がりはあっても、皆それなりに経済成長の恩恵にひたることができる。 そう、直接税で十分なる税収を確保できるわけだ。
ところが、成熟経済になってくると、もはや右肩上がり成長の三角形はない。 どんどん伸びる企業もあれば、脱落していく企業も数多く出てくる。 個人も然り、もうかつてのような終身雇用は期待できないし、平均的な給与水準も低下傾向になる。
そうなってくると、直接税の税収入水準が不安定かつ下がり気味となっていくのは避けられない。 とりわけ、景気後退時や不況時には税収入が激減する。 そういう時ほど、皮肉なことに景気対策など予算投下のニーズが高まる。 つまり、国の財政が一方的に悪化するわけだ。
バブル崩壊して22年、日本の財政が猛烈なスピードで悪化の道をたどってきたのは、まさに税収入の大半を直接税に頼ってきたことの裏返しである。 銀行はじめ多くの企業がずっと法人税を払っていないし、個人の所得税収入も下がっている。 その横で、景気対策予算は1992年から2011年まで年平均して19兆6000億円も投入されたのだ。
もはや、日本の財政にそんな不合理を続ける余裕はない。 そこで重要視されてくるのが、消費税など間接税である。 国民全員に広く薄く税を負担してもらうのが間接税であって、成熟経済の国々では安定的な税収入源として、きわめて大きな役割を果たしている。
日本の財政は相当に危険な状況にまで悪化している。 消費税は現行の5%から10%どころか、一刻も早く15%ぐらいにまで高める必要がある。 もちろん、多くの人々が指摘するように税の無駄遣いは、今すぐにも一掃されなければならない。 それでも、消費税など間接税の収入を増やすのは待ったなしである。
先週も書いたように、消費税を社会福祉税に名称変えして、年金支払いに限定することだ。 使途を限定すれば、まして国民のすべてに関係してくる年金給付に使うのであれば、社会福祉税を国民全員で広く薄く負担することに異論はあるまい。
これまでは、消費税がどこでどのように使われているのか不透明だったから、反対論も多かったはず。 しかし、年金不安を一掃するという趣旨の下での社会福祉税であれば、10%どころか15%にだって引き上げられるのではなかろうか。
そんな大幅引き上げをすると、景気は一気に冷え込んでしまう? 一時的に、それも心理的に消費は落ち込むかもしれないが、そんな心配は杞憂である。 考えたらわかるが、社会福祉税は年金受給者にまわるのだ。 そのお金を高齢層が生活消費に使うことで、経済の現場に資金還流するのだ。
現行の消費税であれば、国の借金返済などにまわってしまうかもしれない。 それでは、経済活動の活性化にはつながらない。 しかし、社会福祉税であれば年金受給者から消費に、つまり経済の中でお金がぐるぐるまわるのだ。 景気が落ち込むことはない。
どうして、こういった真正面からの政策論議が出てこないのだろうね?