原子力発電を再稼動させるかどうか大きな問題となっている。 福島はじめ周辺地域の人々の苦しみはいまも、また将来も長く続く。 それを見るに、地震国日本で原発の安全性をどう確保していくかの課題は絶対におろそかにできまい。
その一方で、今年の夏の電力不足をどう乗り切るのか、早急に解決策を打ち出さなければ間に合わない。 だから、原発再開を急ぐというのは、短絡的に過ぎる。
早い話、電力需要が跳ね上がる夏の午後の電力料金を引き上げ、逆に電力使用量が低い時間帯の料金を引き下げてやれば、企業はじめ電力利用者それぞれのコスト意識から、ごく自然体で需要調整できる。 あるいは、国全体で省エネ省電力の対策を進めるため、省エネにつながる機器を導入した個人や企業には、来年の申告時に全額を税控除することにしてもいい。
今年は間に合わないが、環境負荷の低い再生エネルギーの開発も急ごう。 そのひとつに太陽電池がある。 いまはまだ、エネルギー転換効率が低くて、火力発電や原発に比べ相当に割高であるが、それこそ技術立国を目指す日本にとって格好の挑戦課題である。 植物の光合成が最終目標となるが、可能な限り光合成に近づければ太陽の陽射しで、100%エネルギー自給も可能となる。
そうなると、現在あちこちで進められているソーラー発電所の設置も減らせる。 あれは農作放棄地や工場跡地などの遊休地を活用しているが、太陽電池で覆ってしまった地表は何も活用できなくなる。 それも、広大な地表面積を必要とする。 たとえ農作放棄地だとしても地力が落ちて、将来の農業生産が難しくなる。
転換効率さえ上がれば、建物の屋根や壁を利用するだけで十分に発電できるはず。 地表の広い面積にソーラーパネルを敷き詰めている景観よりも、人口建造物の屋根や壁に太陽電池をさりげなく配置する方がよほどすっきりする。
電力需要の増加にどう対応していくかは、世界的にも今後ますます大きくなっていく課題である。 日本がいまより一桁上の効率を誇る太陽電池で先鞭をつければ、世界中が必要とする超巨大な輸出産業を育成することにもなる。
企業にとっても挑戦だが、国にとっても将来を見越した最重要戦略課題である。