ここ20~30年で顕著となってきたのが、自分の投資判断で行動できない投資家が増えたことだ。
投資家は本来、自分の利益追求で好きに判断し、好きに売買の行動をするもの。
そこに、相場に対する投資家それぞれの読みや思惑といったものが働く余地が生まれる。
マーケットの価格形成に厚みをもたらしてくれるのも、多種多様な投資判断あってこそだ。
ところが、この20~30年ほどの世界の株式市場をみるに、独自の投資判断がどんどん影を薄めてきている。
とりわけ、圧倒的な運用資金量を背にした機関投資家が、マーケット追随型の運用にシフトしてしまった。
よくいわれる、機関投資家の運用では「音楽が鳴っている間は、ダンスを止められない」だ。
踊りを止められないということは、独自の投資判断を封印して、マーケット追随に徹するということだ。
個人投資家はといっても、投資運用する資金量で機関投資家の足元にも及ばない。
だから、一部の個人が独自の投資を展開していても、機関投資家のマーケット追随運用に押し流されるだけとなる。
自分の53年の投資経験でみても、「こんなのが株式市場?」と、眼を疑いたくなるような相場展開が続いている。
それもこれも、80年代から壮大な右肩上がり相場が続いてきたからのこと。
石油ショック以来の過剰流動性の積み増しに、年金マネーのコンスタントな株買いが続いた。
そして、リーマンショック以降はゼロ金利やマイナス金利政策と、中央銀行による無制限の資金供給ときた。
それらが株式市場全体を押し上げ続けてきたわけで、玉石混交の株買いがこれでもかこれでもかと進められた。
その象徴がインデックス運用の大流行であり、機関投資家運用の相当部分を占めるようになった。
一方、ていねいな企業リサーチの上に展開するアクティブ運用が、どんどん片隅に追いやられていった。
もちろん、コンピュ-タによるインデックス運用なかりせば、これだけ巨額な資金を運用できなかったのも確か。
しかし、コンピュータによる運用はマーケット動向をなどるだけで、独自の投資判断はしない。
その結果が、独自の投資判断ができない投資家ばかりの株式市場となっていったわけだ。
ということは、ずっと続いているカネ膨れした株式市場だが、なんとかショックが発生するまでダラダラ続くわけだ。
そして、ある日突然、なんとかショックの暴落が世界の株式市場を襲うことになるのだろう。
独自の投資判断ができる投資家なら、いまの間にさっさと売りを出して、マーケットから離れるのにね。