科学や技術の分野での専門家は、しっかりとした裏付けがあって信頼性が高い。
その点、投資関連の専門家の見解は、その人の経験に基づいてのものが多い。
もっとも、その経験は単なる実体験だけではない。 その当時の学術的な研究の実証成果も含まれる。
したがって、専門家の見解には今後の投資戦略で参考にできる点も多々ある。
ただしだ、40年50年ぶりの状況変化、つまりメガトレンドの変化ともなると、話は別である。
専門家とやらも、職務として投資判断したり、運用指図してきた経験が及ばない、未体験の領域に入ってくる。
そうなってくると、投資専門家の見解というのも、さてさてと怪しくなる。
ちょうど今が、そうだ。 彼らは声を大にして、これ以上の金利引き上げは、景気を冷やしてしまう。
さらには、銀行の経営不安も高まってきているから、米国の金利引き上げも5月で打ち止めとなろう。
来年の米大統領選を考慮すると、景気も株価も高くなっていくのが経験則である。
だから、債券投資家も株式投資家も買いの準備を、といった見解を多く発している。
彼ら専門家からすると、インフレ騒ぎで金利が上昇してきたのが異常値であって、そろそろ正常(?)に戻ると主張したくなるのだろう。
彼らにしてみれば、金融緩和でもって景気を浮揚させ、成長率を高めようとする政策がずっと続いてきたのだから。
ところが通常の経済では、景気変動はごく普通の現象である。 昔から、景気が良くなったり悪化したりを繰り返してきた。
そして不況の効用といわれるように、健全な経済活動にとっても、景気後退は必要なステップとされてきた。
なのに、この40年ほどというもの、とにかくリセッション回避だ、金利を下げろ資金をさらに供給しろで,ずっとやってきた。
それが金融緩和政策の果てしない深掘りであり、金融マーケットの大発展であった。
その横で、一部の高所得層への富の集中と、多数国民の低所得化が進んだ。
多くの投資専門家にとっては、そういった40年越しの金融緩和と、債券や株式市場の大活況が原体験である。
そこで膨れ上がった張りぼての経済に対し、実体経済の現場からインフレと金利上昇の刃が突き付けられてきた。
つまり、メガトレンドの変化だ。 金融緩和政策の行き詰まりと、実体経済への回帰という大変化だ。
ということは、ゼロ金利ではなく、金利はあって当たり前の経済に戻っていくわけだ。
その過程で、じゃぶじゃぶの資金供給で膨らむにまかせてきた金融や経済活動で、贅肉の削ぎ落としが進むのは避けようがない。
われわれ本格派の長期投資家からすると、相当な混乱は避けられず、そこで大勝負となる。