この表題だと、現在進行中の金融緩和バブルが崩壊していくことをテーマにしている。
そう思われるかもしれない。 いずれ、同じテーマで書くことになるが、それはもう少し先だ。
実は、1990年代に入って日本のバブルが崩壊しだした。 あの頃、マスコミが先頭に立って大騒ぎした。
そのテーマが、このままでは日本は大変なことになる。 銀行や企業が次々と潰れ、大量失業が発生すると。
そうなると、経済は立ち行かなくなり、社会も大混乱する。 それは、なにがなんでも防がなくては。
ということで、92年9月の総合経済対策を皮切りに、銀行救済と企業の倒産防止を最優先政策とした。
その背景には、土地や株式への財テク投機に踊った銀行や企業の多くが、バブル崩壊によって巨額の評価損や不良債権を抱え込んでしまった。
とにかく銀行の不良債権問題を解消し、貸し渋り貸しはがしで企業が窮地に陥るのを防ぐのだ。
そのためにはと、超低金利政策に踏み切って、家計が得ていた預貯金の利子所得をゼロ同然にまで引き下げた。
預金者への利子支払い分を限りなくゼロにすれば、その分だけ銀行の業務純益を積み上げられる。
それでもって、銀行の不良債権処理を急がせようという政策だった。
しかし、不良債権処理は遅々として進まず、2000年代に入って小泉政権が強行するまで10年の月日を浪費した。
ともあれ、銀行の不良債権問題は解消した。 その結果として、日本経済はどうなったか?
バブル崩壊から32年が経とうとしているが、日本経済は長期低迷したままである。 まったく活気が戻ってこない。
どうしてか? 銀行や企業を潰さない政策が、日本経済全般にゾンビ化を蔓延させてしまったのだ。
自由競争経済では不可欠の、優勝劣敗と適者生存の原則を踏みにじって、なんでも国頼みのゾンビ企業を大量生産してきた。
現に、金利はゼロにし資金はいくらでも借りられるといった経営環境が、30年強も続いている。
そんな甘ちょろい経営環境なら、どんなヘボ経営でも企業は潰れずにやっていける。
当然、日本企業の生産性は上がらないし、ゾンビ企業が多いから国の税収入も上がらない。
それどころか、競争力のない企業が潰れていって、より強い企業への労働力の移転がさっぱり進まない。
それで、日本全体では労働者不足に頭を抱えることに。 企業の適者生存と新陳代謝が進めば、そんな問題はたちまち解消できるのに。
そんなわけで、銀行や企業が潰れたら大変なことになるが、結果的には日本経済が大変なことになってしまった。
この先、どうなるのか? インフレ到来と金利上昇という、経済合理性の刃が襲いかかってきつつある。
金融マーケットや経済の現場で大混乱は避けられないが、ずいぶんスッキリしてくるだろう。