日銀の黒田総裁は、日本のインフレ率が低いから、米欧のように利上げを急ぐ必要はないといっている。
そのため、たとえば日米の金利差は3%を超え、円安は1ドル143円をつけるまでに進行している。
10年物国債での長期金利でいうと、日本の0.25%以下に対し、米国では3.39%をつけてきている。
それでも、黒田総裁はどっしりと構えたまま。 どういう考え方かは知らないが、経済合理性の無視は明確だ。
どういうことか? このまま円安を放置していると、世界で進んでいるコストプッシュインフレの餌食となる。
つまり、どこかで円安が輸入インフレを加速させ、国内インフレの火に油を注ぐ。
そうなると、これまでの反動で一足飛びに、とんでもないインフレとなる恐れが十分にある。
これまでの反動? 世界的なインフレ圧力で、エネルギーはじめあらゆるコストが上昇してきている。
それに対し、なかなか価格転嫁できない弱小企業の生産現場では、必死にコスト増を耐え忍んできた。
しかし、いつかは限界がくる。 耐えられなくなって一斉に値上げに走るや、国内の物価は跳ね上がる。
その時は、とんでもないインフレの嵐が経済全般に襲いかかり、生活者を大いに苦しめることになる。
もうそうなると、黒田総裁だろうと誰だろうと、打つ手なしの状態となってしまう。
あまりに無責任、そういった誹りを浴びせたところで、なんの解決にもならない。
毎度の繰り返しである。 いつも無為と問題の先送りで、ズルズルと事態の悪化に手をこまねいているのが、日本の政治である。
日銀にしても中央官庁にしても、優秀な人たちが集まっており、決して鈍感ではないはず。
にもかかわらず、これまでの政策に固執して、抜本的な解決を図るといった柔軟さは、さっぱりみられない。
これは、役所とかの問題を超えて、政治家の質が問われるといってもいいだろう。
残念ながら、英邁なる政治家には、ちょっとお目にかかれそうにない。 それが、日本の現実である。
ならば、われわれ生活者は、どう対処したら良いのか? 実体経済から一歩も離れないことだ。
インフレはじめ、大きな経済混乱は避けようがない。 それでも、人々の生活は続くし、それを支える企業活動も一時として止まらない。
その部分に焦点を当てた仕事をして生活費を稼ぎながら、長期投資を進めることだ。
それに徹しておけば、インフレにも乗れてしまうし、資産も守れる。 まさに、自助自立の生き方である。