国際金融協会(IIF) によると、世界の債務残高は昨年末で世界GDPの3.5倍に達したとのこと。
この10年ほどで、2.5倍が3.5倍へと急増しているわけだ。 世界経済ひとつ分の借金が追加されたことになる。
世界債務は、国や企業そして金融機関さらには個人を含む、すべての借金残高をいう。
それが、世界経済の3.5倍の規模にまで膨れ上がっているわけで、異常なる金融緩和政策の産物である。
金融緩和政策の産物と書いたが、とんでもなく恐ろしい火薬庫でもあるのだ。
火薬庫? そう、ゼロ金利やマイナス金利といった政策をいいことに、いろいろな債務が野放図に膨れ上がってきた。
ところが、世界的なインフレ圧力の高まりで、金利は上昇に転じてきている。
米国の政策金利は、すでに2.25%も引き上げられた。 次の政策会合では、3%も視野に入っている。
ヨーロッパ中央銀行も金利引き上げに転じているので、世界の債務残高にとっては危険信号が灯ってきたといえる。
かりに2%の金利上昇で、世界の債務残高に対する利払い負担は、6兆ドルも増加することになる。
6兆ドルの金利負担とは、日本経済の1.6倍という巨額な金額である。 とんでもない負担増となる。
いまのところ、金利負担の重荷が世界の債務者にのしかかってきてはいないようだ。
しかし、いつ火を噴くか知れたものではない。 だから、恐ろしい火薬庫といっているのだ。
たとえば、日本の個人の住宅ローンでいうと、全体の70%~80%は変動金利の設定となっている。
いずれ日本の金利も、世界インフレの流れに沿って上昇に転じよう。
そうなると、変動金利で設定された住宅ローンの毎月の返済額が増加するのは避けられない。
住宅ローンを抱えている個人や家計は、厳しい現実に直面しよう。
ことほど左様に、金利上昇の波は世界中に押し寄せてきて、債務者に重くのしかかってくる。
どこかで、大きなデフォルト(債務不履行)が発生したりすると、債券などの総売りで世界の金利は急騰する。
金利急騰は、野放図に膨れ上がった世界の債務残高に、鋭利な刃を突き付けることになる。
それは、世界的な金融緩和が行き着いた果ての断末魔となろうが、避けて通れそうにない展開である。