米国では毎年8月末の恒例行事となっている、先週末にジャクソンホール会議があった。
一番の目玉は、FRBパウエル議長による講演で、今後の金融政策に注目が集まった。
投資家はじめ金融関係者の予測では、インフレ鎮静化の傾向を踏まえて、「利上げ幅を縮小するのでは」だった。
ところが、パウエル議長はインフレ抑圧には手綱を緩めないという、強い姿勢を打ち出した。
その発言で、株式市場は大きく下げた。 10年物国債の利回り、つまり長期金利は3.1%台に乗せてきた。
とにかくインフレは抑え込むのだという強い姿勢の背景には、1970年代の苦い経験がある。
1973年10月の第一次石油ショックで、戦後ずっと1バレル3ドル以下だった原油価格が、10~11ドルに跳ね上がった。
それで、世界的な狂乱物価として歴史に残る、すごいインフレを招くことになった。
そのインフレも、3年もすると伸び率が鈍化してきたので、収まったものと一安心した。
ところが、インフレの火だねはそう簡単に消えず、そこへ79年末から80年初にかけて第二次石油ショックが襲ってきた。
今度は原油価格が1バレル30ドル~34ドルへと引き上げられた。 それで、インフレの再燃だ。
今度こそはインフレを徹底的に抑え込もうと、ボルカーFRB議長が長期金利を一気に引き上げた。
なんと、91年の9月には15.8%を記録するまで、長期金利は上昇した。
強烈な金利引き上げが功を奏して、さすがのインフレも鎮静化に向かい出した。
あの当時の苦い教訓もあって、米国の金融当局も早いうちにインフレを抑え込んでしまおうと考えているのだろう。
いまのところ、長期金利は3%ちょっとだが、かりに5%6%となっても、91年の15.8%よりはずっとましだ。
米FRBは利上げとともに、金融の量的引き締めも急いでいる。 市場にダブついているマネーをできるだけ吸い上げてしまおうとするわけだ。
これらの政策は、金融緩和バブルの崩壊につながっていくのは間違いない。
なにしろ、金利がまだまだ引き上げられるのだから。 となると、債券市場はどこかで崩れ出すのは避けようがない。
もちろん、金利上昇で株式市場にも売りが急拡大することになろう。 すごい暴落相場となっておかしくない。
金融マーケットはもちろん、経済や社会にも大きな混乱をもたらすのは、眼に見えている。
それらのすべてが、この40年間の金融の時代の幕引きとなろう。
その先で、実体経済の復活が見えてこよう。 まさに、われわれ長期投資家がずっと待ってきた健全な経済だ。