一時は急激なインフレ圧力の台頭に世界が身構えたものの、最近はやや落ち着いてきている。
インフレ動向も来年には穏やかなものに収まっていく、そういった観測が主流的ともなってきている。
甘いと思う。 たしかに、コロナ不況の反動で需要が急回復してきてのインフレ圧力は収まっていくのかもしれない。
消費需要が急増した反面、供給体制が間に合わなかった状況は、徐々に解消されてきているのだから。
そういった一時的な需給のひっ迫に対し、世界的なコストプッシュ型のインフレ圧力は、そう簡単に収まりそうにない。
エネルギー問題ひとつとっても、原油や天然ガスそして石炭などの価格は高値水準に張り付いたままとなっている。
ロシア軍のウクライナ侵攻は半年が過ぎた。 ウクライナ東部と南部の戦線は膠着状態にあって、戦争の長期化が懸念されている。
その横で、西側諸国によるロシアに対する経済制裁だが、ことエネルギーに関してはヨーロッパを締め上げている。
年内にロシアからの天然ガス購入を全面ストップさせるとしたものの、EU諸国は代替エネルギー源の調達に躍起となっている。
一方、ロシアは原油や天然ガスを中国やインドなどに大量輸出することで、一定の収入を確保している。
それで、西側からの強力な経済制裁にもかかわらず、ロシア経済はなんとか持ちこたえているわけだ。
となると、当分はエネルギー価格を高止まりを続ける公算が強いと判断せざるを得ない。
また、ここへきて浮上してきた賃金上昇圧力も、コストプッシュ・インフレの大きな要因となる。
金融緩和政策によって一部の人々の所得が異常に伸びてきた横で、先進国も含めて世界的に低所得層が拡大していた。
人口構成の大半を占める人々が低所得化に喘いでいたところへ、インフレによる生活圧迫がのしかかってきた。
生活防衛のためとする賃金上昇圧力が、世界中あちこちで高まっていくのは避けられない。
それが、世界的なコストプッシュ・インフレをさらに増長させることになる。
インフレが進めば、それを抑えるためにと政策金利は引き上げられる。 ちょうど、いまがそうだ。
同時に、お金の価値が下がっているのを埋め合わせするべく、金利は自然と上昇する。
そう、世界的なインフレ圧力はそう簡単には収まらず、つれて金利も上昇していくことになる。
それに対し、日銀は相変わらず金融緩和政策に固執している。 大河の流れに掉しているようなもので、いずれ押し流されよう。
その時は、酷いインフレと金利急上昇が、日本経済を襲うことになるのだろう。
いつも主張している長期投資の方向でもって、酷い混乱を乗り切ろう。 それが一番である。