昨日の続きとなるが、この25年間というもの日本経済はずっと低迷とじり貧を続けている。 いろいろな景気対策を講じてきたし、超低金利からゼロ金利そしてマイナス金利まで導入したが、まったく効果が見られない。
その主眼は、「企業活動を活発化させ産業を興すことで、景気を浮上させデフレを克服する」ところに置かれた。 そういった伝統的な景気回復策が、さっぱり功を奏さないのだ。
であるならば、景気対策の方向を抜本的に変えてみるしかない。 すなわち、国内総生産(GDP)の60%強を占める個人消費を高める方向に、景気対策の焦点を移すのだ。
具体的には、先ず金利を正常化させること。 この22年間、超低金利からゼロ金利まで日本の政策はずっと家計の利子収入を奪いつづけた。 不良債権処理や企業活動の活発化のためには、家計から法人部門への強制的な所得移転もやむなしということで。
その所得移転がさっぱり効果を生んでいないのなら、もうこれ以上の家計圧迫は即刻やめた方がいい。 預貯金の金利を通常の3%~4%に戻してやるだけで、個人消費はたちどころに回復する。
たとえば、個人金融資産1741兆円のうち預貯金に眠る839兆円からは、20兆~27兆円もの利息収入が生まれる(税引き後)。 その半分を消費に回すだけで、日本経済は2%~2.7%の成長するのだ。
アベノミクスがいくら頑張ったところで、1%の成長もおぼつかない。 ところが、金利を正常化させるだけで、いとも簡単に2%以上の成長が見込めるのだ。
また、個人消費額が増えることで新しい産業を生み出す起爆剤ともなる。 成熟経済となった今、さすがに耐久消費財への消費はもうそう伸びない。 せいぜい買い替え需要が主体となっていく。
ところが、個人や家計の消費余力が高まることで、モノでない何かを求める需要が新しい産業を生み出すのだ。 ちょうど、手もみ足もみのお店があっちこっちに増えてきているように。
そう、文化・教育・芸術・健康・スポーツ・技術・寄付・NPO・ボランティアといった方向で、人々はお金をつかうようになる。 全部まとめてサービス産業ということもできるが、そういった消費構造の変化こそが成熟経済である。
景気対策の主眼を産業育成から消費拡大にシフトさせると、日本経済のあらゆるところで一時的な大混乱が発生する。 実は、その混乱こそが日本経済の活性化に避けて通れない道なのだ。
たとえば、金利正常化の過程で国債は暴落するだろうし、企業の多くは経営破たんに追い込まれる。 それを恐れて、現行の景気対策をズルズルと続けているわけだが、景気浮上はまったく見えてこない。
このままいくと、いずれは日本全体がユデガエルになるだけのこと。 つまり、国債の暴落も長期金利の急上昇も、金融機関や企業の経営破たんもどこかで発生し、経済も金融も大混乱に陥る方向に日本全体が進んでいるのだ。
大混乱に陥ってから大慌てするのか、こちらから仕掛けていって混乱を乗り切るのか、その違いだけである。 どうせなら、個人消費を高めるという方向を明示して、混乱に飛び込んでいったほうがいい。 それが、日本経済の活性化にもつながっていく。
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