どちらにしても長期投資しておこう

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 二晩続けて出版セミナーなるものをやった。 池袋と八重洲の書店セミナー室で、新著の購入者に向けてだったので、いつもよりは少人数だった。

 書名が、「その時、あなたの預貯金は本当に安全か?」で、いろいろな角度から預貯金カンカチコンの人たちに意識の転換を訴えている。

 一刻も早く預貯金オンリーの考え方を捨てようと訴えるのは、「利子がほとんどつかないから、財産づくりにならない」というだけではない。

 第1に、危険だからだ。 ちなみに、ペイオフという制度があって、1000万円までの預金元本は、預金保険機構が保証してくれることになっている。 しかるに、預金保険機構の資金プールは、2兆円ちょっとでしかない。(2015年3月末)

 個人や家計の預貯金は839兆円あって、うち170兆円弱が郵便貯金である。 ということは、640兆円ほどが民間の預金勘定となっているわけで、それを保証する資金プールが2兆円ちょっとしかないのだ。 いざとなった時に、足りるはずもない。

 第2に、家計の貯蓄率が2014年からマイナス圏に突入しており、日本全体では貯蓄の食い潰しが始まっている。 現に、貯蓄ゼロの世帯は31%となっている。 (日銀、貯蓄広報中央委員会、2014年)

 先進国の平均が7%~8%なのに、日本だけが唯一マイナス圏に入ってきているのだ。 これまではデフレにも助けられて預貯金の価値は高かったから、このまま行けるだろうと多くの家計はのんびり構えているかもしれない。 その横で、預貯金の食い潰しが進んでいるのだ。

 個人金融資産は1741兆円もある。(2015年末) だから、国の借金1049兆円も大丈夫といってきたが、その根拠が崩れ出しているのには要注意である。

 第3に、日銀の2%インフレ目標はなかなか実現しないが、恐ろしいほど大量の資金供給で将来インフレの種を蒔き続けているのは間違いない。

 いざインフレの火が燃え上がってきたら、預貯金の目減りは一気に進む。 デフレはまだまだ続くと高をくくっていると、大慌てさせられることになろう。

 第4に、そう考えると、いまある資産をできるだけ殖やしておかなければならない、それには長期投資だということになる。 始めるのは、早ければ早いほど良い。

 まあ、ざっとこんなところを新著では訴えている。 預貯金に置いておいてはつまんないよということだが、それだけでお終いではない。

 より大事なのは、お金に働いてもらおうということ。 預貯金が大丈夫かとかの次元でチマチマしているのではなく、長期投資でお金にしっかり働いてもらって、元気あふれる経済社会をつくっていくのだ。

 長期投資のリターンは後からついてくる。 それは、さわかみファンドの16年9カ月で年率複利4%という実績が示している。

 もちろん、将来の成績を約束はできない。 そうはいうものの、どのように長期投資して、どのように実績を積み上げてきたかを見てみれば、その安定度と再現性の高さは推察できよう。

 明日から29日まで、イタリアへ出張です。 次回の長期投資家日記は5月30日となります。

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 ★注意 上記の内容は澤上篤人個人の見解であり、さわかみ投信株式会社の考えおよび「さわかみファンド」の運用を説明しているものではありません。 個人の真意を尊重するため、原則、文章の修正はせずにブログを公開しております。