米国の10年物で1.589%の利回りと、歴史的に低い水準にある。 ドイツ国債や日本国債の長期利回りはマイナス圏だ。
それでも、世界の機関投資家は安全資産ということで、これらの国債を買いまくっている。
たしかに、米独日の経済は規模も安定度も抜群である。 その意味では、資金の置き場所としての安全性は高いともいえよう。
しかし、投資対象とする上で本当に安全だろうか? 米国債の10年物でいうと、過去100年の平均的利回りは5.6%ぐらいである。
それに対し、過去最低は数年前に記録した1.38%である。 現在の水準は、もう十分に低い。
ここから先、米国債の利回りは一体どこまで下がる(国債価格は上がる)余地があるというのだろう?
ドイツ国債や日本国債に至っては、マイナス利回りすなわち保有していると利金を支払い続けるのだ。
そんなものが、どうして投資対象といえるのか? 安全資産どころの話ではない。
こんなおかしな投資判断が世界のプロの間で、おかしいと思われないのは、彼らがディーリングをもって投資としているからだ。
われわれ長期投資家からすると、絶対に出を出さない超低利回り(マイナス利回り)の国債でも、ディーラーだったら食いついてくる。
つまり、売って値ざやを稼ごうとするディーリングであれば、マイナス利回りの国債を買っても平気なわけだ。
それが、世界の金融市場で支配的な価値観というか、お金の流れの主流となっているのだ。
そして、大きな落とし穴に気付いていない。 あるいは、自分たちがマーケットを牛耳っているとする傲慢さで、高を括っている。
どういうことか? ディーリングにしても、買ってくれる人がいるから、売り抜けられる。
彼らの傲慢さは、いつでも売り抜けられるという前提条件に微塵の疑いも持っていないからのこと。
いつでも売れると信じて疑わないから、マイナス利回りの国債でも平気で買って、値ざやを稼ごうとするわけだ。
そんな傲慢さが木端微塵に吹っ飛んだのが、リーマンショックで金融バブルが崩壊した時である。
売ろうにも売れない、買い手がいなくなったから、余計に慌てて売ろうとする。 それが売りに売りを呼ぶ修羅場となっていった。
いま世界中のマネーのほとんどが、いつでも売れるだろうとするディーリング感覚でもって、わずかな利ザヤ稼ぎに集中している。
これは、リーマンショックに突っ走っていった当時と、まったく同じ図式である。 いや、それ以上に酷いかもしれない。
米欧日そして中国の中央銀行が資金をどんどん供給しているのをみて、買い手はいくらでも存在するという想定をどんどん強めているのだから。
彼らにしてみれば、中央銀行の無限の資金供給力は無敵である、そう信じて疑わない。
しかし、物事には必ず限界がくる。 もうそう遠くない将来にも、中央銀行の金利引き下げによる金融緩和政策が効かなくなる日がくる。
そうなった瞬間、市場金利の急上昇という形で、市場のしっぺ返しが強烈に襲いかかってくる。
世界のマーケットは、すさまじい大混乱に叩き落されよう。 世界中の機関投資家や金融機関は右往左往する。
一人、われわれのような本格派の長期投資家が、平然と買いを進めるという図式が見られよう。