政治も株式市場も、円高はマイナスという固定観念にとらわれ過ぎている。 思考停止もいいところ。
そもそも、一国の通貨が強くなるということは、国力の強化を象徴してのもの。 それ故、歓迎こそすれ嘆き悲しむ理由はどこにもない。
よく円高が進行すると、輸出産業が打撃を受け、それが国内景気を冷やしてしまうといわれる。
いかにも、もっともらしく聞こえるが、本当だろうか? 過去を振り返ってみれば、いかに間違っていたか一目瞭然である。
1971年のニクソンショックで、円は戦後ずっと続いた1ドル360円から308円に急騰した。
そのすぐ後、73年11月には第1次石油ショックに襲われ、輸出産業はじめ日本経済はダブルパンチを食らった。
しかし、日本経済は2年半で回復した。 世界で一番早く石油ショックを乗り切ったわけだ。
その後も、変動為替相場に乗って円は上昇を続けたが、輸出企業はすさまじい経営努力で円高をクリアしていった。
1985年のプラザ合意では、円は1ドル250円から120円台に切り上げを余儀なくされた。
円が一挙に2倍となり、今度こそ致命的な打撃と大騒ぎされたが、それも日本企業は克服していった。
その後も円高は進み、94年には1ドル80円を切るまでに上昇した。 日本経済が米国経済に肉薄したのは、まさにその頃だった。
円がドルに対し、実に4.5倍の切り上げとなった。 その間の企業努力は凄まじいものがあったし、脱落していったところは数知れない。
それだけ、生き残った企業は鍛えられたわけだ。 それと並行して、日本経済も強大化していった。
ところが、この10数年というもの、円高では生きていけない、デフレ経済に潰されてしまうといった見解が支配的となっている。
それとともに、日本企業の軟弱化がじわじわと進んできている。 アベノミクスでも、円安誘導が主眼となっている。
マイナス金利とか、滅茶苦茶な金融緩和も、ひとえに円安で経済を活性化しようということだ。
軟弱な企業が一体どこまで日本経済の将来を背負っていけるのか、一度しっかり考えてみようではないか。