企業リサーチの劣化

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株式投資はもともと個別企業をていねいにリサーチして、投資判断を下すもの。

個人投資家なら会社四季報などを読み込んだりして、投資したい企業を選び出す。

機関投資家であれば、企業リサーチ部門があってアナリスト達が個々の企業の投資可能性を分析する。

ところが、日本株投信の85%がインデックス投資となっている。(国内株式型に占める割合)

米国においても、インデックス・ミューチュアル・ファンドや米国株ETFが50%半ばを占めている。

インデックス投資は、日経平均やTOPIXに連動するようプログラミングされたコンピュータ運用である。

したがって、個別企業のリサーチなど、そもそもからして必要がない。

一方、インデックス運用でない残りの部分は、個別株投資つまりアクティブ運用ということになる。

とはいえ、大手金融機関中心に預かり運用資産が最近はやたら巨額となってきている。

それをアクティブ運用するとしても、どこまで個別企業リサーチが遂行できているかは疑問である。

運用資産の巨額さからみても、100名~500名ぐらいのアナリスト達を擁していて当然である。

しかるに、それほど大陣容の企業リサーチ部門を抱えた運用会社など聞いたことがない。

多くは財務諸表の数値をデータ分析したり統計処理しての、ああだこうだに終始しているだけのこと。

ちなみに、ROE(自己資本利益率)がどうのこうのと言われるが、ベースとなる自己資本額は1年前のもの。

昨年3月末の本決算で発表された自己資本額に対し、利益がどうだったかで投資評価しているのだ。

1年前のデータでもって、ROEが高い低いを論じても、しょせん投資にはならない。

ROEとかを云々するのなら、10年ぐらい先までの予想財務諸表を作成するぐらいの力を養うべきである。

その上で、今は先行投資をしているからROE値は低くなっているが、利益回収期に入ればこれこれまで高まろう。

したがって、そういったROE値の高まりを期待して、ROE値が低い今のうちに買い仕込んでおこうと判断できる。

これが、アクティブ運用における企業分析というものだが、ほとんど誰もやっていない。

そういった現実に対して、昨今はESG投資とかSDGsとか議決権行使とかが喧しくなってきている。

結構な風潮だが、一体どこまで深く企業を調べてのESG投資でありSDGsとか議決権行使なんだろう?

まあ、カネ余りバブル高が終焉すれば、インデックス運用がズタズタになり、10年ほど冬の時代を迎える。

そこで、ホンモノのアクティブ運用が脚光を浴びるのだろう。 われわれ本格派の長期投資家の出番である。