40数年ぶりのインフレ台頭と金利上昇は、世界の機関投資家はじめ投資家たちにとって、はじめての経験。
やっかいなことに、80年代に入ってからの空前の上昇相場が、彼らにしみついてしまっている。
この40年余り、世界的な金融緩和による過剰流動性と、増え続けた年金マネーが強力な買い主体となってきた。
それが世界の債券市場や株式市場を、かつて歴史に例を見ない長期の上昇相場に押し上げていった。
その結果、世界のほとんどの投資家は債券にしても株式にしても、値上がりしか知らない。
それを象徴するのが、インデックス投資神話である。 あるいは、インデックス運用に対する絶対的な信頼である。
普通、株式投資するにあたっては、ここから値上がりしそうな株式を取捨選別する。
そこに、運用リサーチ能力とファンドマネジャーの才覚や力量が、如実に発揮される。
ところが、どの株式も値上がりするのだから、平均株価を買っておけば良いとなってしまう。
機関投資家からすれば、平均株価つまりインデックスを買うだけだから、コンピュータにやらせておけばいい。
多大なコストがかかる運用リサーチ陣を抱えたり、優秀なファンドマネジャーに大金を払う必要はない。
そんなわけで、世界の機関投資家による株式ポートフォリオの70%~80%は、インデックス運用となっている。
そこへ襲った来たのが、世界的なインフレ台頭と、それに伴った金利上昇である。
インフレや金利上昇など未経験だから、機関投資家はじめ多くの個人投資家は、どうしても楽観に走りがちとなる。
まさに、そこが世界の金融マーケット全般に忍び寄ってきている不安要因といえよう。
すでに米国の政策金利は5.25%に、EUや英国も4.0%~4.5%に引き上げられた。
米国の長期金利も4.4%にまで上昇してきている。 それらは、経済活動全般にコスト上昇要因として重くのしかかってきている。
いずれ時間の問題で、企業の業績が下方修正されたり、低利回り債券の投げ売りといった展開となっていこう。
この40年間、とりわけリーマンショック後の15年間、世界の株式も債券も天文学的な買いポジションとなってきた。
その買いポジションの一角でも崩れだしたら、収拾のつかない売り地獄にもなりかねない。
そのあたりの読みは、われわれ本格派の長期投資家からすると、ごく自然の展開に映る。
しかし、世界の機関投資家はじめ多くの個人投資家にとっては、まだまだ現実感に遠い想定なんだろう。
そういった彼らの強気に対しては、お大事にとでも言っておこう。