首相が唱える資産運用立国に、金融業界はじめマスコミは盛り上がっている。
なにしろ、999兆円もの巨額な個人マネーが預貯金に眠っているのだ。(日銀統計、2023年3月末)
その1割でも投資に向かえば、とんでもないビジネス拡大チャンスとなるから、金融業界が熱くなって当然である。
たしかに、99兆円とかの資金が金融マーケットに流入してくれば、株価などは暴騰する。
株式市場や債券市場は大活況となり、金融ビジネス全般に大儲けが期待できよう。
また、株価や債券価格の上昇は資産効果を生むから、経済活動の活性化にもプラスとなる。
まさに、良いことづくめである。 だから、資産運用立国のスローガン大歓迎となる。
しかしながら、999兆円もの預貯金マネーそれを保有しているのが、不特定多数の国民である。
そのたった1割でも投資に向かえばというが、99兆円もの巨額資金だ。 そう簡単に投資へと動き出すものだろうか?
もっとも、国や金融業界による投資しようの掛け声に乗って、1兆円や2兆円はすぐ動こう。
その投資が上手くいって、それなりの儲けを実感できてはじめて、5兆円10兆円と追加投資の熱が高まる。
ところが、どこかでマーケットが大きく下げたりしたら、投資熱は一気に冷え込む。
となると期待していた、99兆円の1割ほどが投資に向かっただけで、またぞろ預貯金に戻ってしまう。
そうなのだ、投資すればいいといっても、ここからまだ上昇相場が5年10年と続く必要がある。
それで初めて、20兆円50兆円といった巨額の預貯金マネーが投資勘定にシフトすることになる。
すべからく上昇相場頼み。 それが金融業界の発想であり、限界でもある。
限界? そう、ここからさらに5年10年と上昇相場が続くとする想定が、そもそも甘い。
もちろん、金融業界からすると預貯金マネーが10兆円20兆円と流れ込んでくれば、上昇相場は続くと期待できよう。
さはさりながら、投資家たちの一部で売りが出てくれば、多くの人たちも利益確定と損失回避の売りに走る。
そこで、さしもの上昇相場は反動売りに直面して、大きく値を下げる展開となっていく。 元の木阿弥だ。
その点、本格的な長期投資による資産形成が進んでいくと、預貯金者は安心して投資へとシフトできる。
結果として、100兆円200兆円の預貯金マネーが投資へと動いてしまうことになる。
そうなのだ、やたらと投資熱を煽るよりも、本格的な長期の資産形成を国民に提示していくべきである。