先週末から昨日にかけて、米国の銀行が相次いで経営破綻した。
いずれも、金利上昇による保有債券の値下がりで、銀行経営の資金繰りが厳しくなったためだ。
昨年2月までのゼロ金利と空前のカネ余りで、どの銀行も貸し出し業務は伸び悩んでいた。
一方、債券市場はずっと右肩上がりを続けていた。 それで、余資を債券投資にまわしていたわけだ。
ところが、その債券投資が昨年3月からの政策金利引き上げで、値下がりに転じていった。
余資運用がマイナスに転じていったわけで、そんな銀行の経営に不安を覚えた預金者が解約に殺到した。
いわゆる取り付け騒ぎだ。 銀行が取り付け騒ぎに追い込まれると、あっという間に経営は破綻する。
なにしろ、預金者が預けたある資金を引き出そうと殺到し、現金が急速に流出していくのだから。
この事態に、米FRBは預金の保全を約束した。 それで、取り付け騒ぎは収まったものの、銀行は破綻である。
これで一件落着、とはいかないだろう。 なにしろ、他にも破綻予備軍が目白押しなのだから。
破綻予備軍? 世界の債務はすべて合わせると、世界GDPの3.5倍に上ると算出されている。(世界金融協会)
ゼロ金利と未曽有の資金供給を受けて、国をはじめ金融機関、企業、個人が借り入れをどんどん膨らませてきた。
10年前までは、世界の債務残高は世界GDPの2.5倍だったのが、一気に3.5倍にまで膨れ上がったわけだ。
すごい借金の増加ぶりだが、それもこれもゼロ金利と資金はいくらでも借りられる状況下だったからのこと。
ところが、野放図に駆りまくった借金は金利が上がってくると、たちまち窮地に追い込まれる。
同様に、保有している債券など利回り稼ぎの金融商品は、金利上昇のあおりを食って値下がりに転じる。
そういった状況下に、世界中の金融機関や企業が追い込まれているわけで、経営破綻が横へ広がってもおかしくない。
たまたま日本は、日銀が無理に無理を重ねて金利上昇を抑え込んでいるから、まだ落ち着いていられる。
とはいえ、日銀の財務が異常に膨れ上がっているから、いつそれが破裂するか知れたものではない。
どこかで日銀が手を挙げたら、日本の金利は跳ね上がり、投資損や経営破綻の嵐が吹き荒れよう。
要するに、世界的なインフレ圧力も、それに伴う金利上昇も、実体経済から突き出てきた経済合理性という刃である。
ゼロ金利とか野放図な資金供給に対し、ついに経済合理性が働きだしたわけだ。
これは大自然の摂理のようなもので、誰も逆らえない。 つまりは、破綻の連鎖が続出するのだろう。