英国のトラス首相が辞任に追い込まれた。 史上最短の首相辞任となる。
保守党内そして国民の支持を得るべく、トラス氏は大幅減税など大判振る舞いの政策を打ち出した。
それに対し、マーケットでは英国債売りとポンド売りが集中し、閣僚辞任が相次ぎ内閣運営がとん挫してしまった。
いかに英国経済を立て直すと主張しても、支持率が急低下し辞任するしかなくなったわけだ。
なによりも、政権の内外で財政悪化懸念の声が高まり、その圧力には抗しえなかったのが大きい。
この一連のドタバタ劇よりも、一層の財政悪化にブレーキをかけなければとする、英国人の意思を評価したい。
ひるがえって、日本では国の財政悪化にまったく無頓着の政治家が多すぎる。
国民も国に甘え切って、さらなる予算のバラマキを要求しまくっている。
もう既に、日本経済の2.3年分にあたる、1200兆円を超す借金を抱えているというのに。
また、日本の財政赤字は対GDP比でみると、先進国で最悪の水準を独走している。
その結果として、金利は上げられないは円安は進むはで、日本経済はズルズルと弱体化の道を転げ落ちていくばかリ。
たとえば、ゼロ金利を維持しないと、予算の40%前後を国債発行で賄っている財政運営が、とん挫してしまう。
財務省が発表しているように、1%金利が上がるだけで、国は3.7兆円の利払い費が発生する。
あるいは、財政赤字を補うべく事実上の財政ファイナンスで、国債を片っ端から買い込んできたのが日銀である。
ずっと高値で国債を買いまくってきたから、金利上昇は国際価格の下落となり、日銀は大きな評価損を抱え込む。
また、金融機関からの国債購入代金は、日銀への当座預金として積ませてきた。
その残高が、567兆円に達しており、1%の金利上昇で5.6兆円の利払い費が発生する。
どちらも、日銀の財務を危機状態に追い込む。 だから、なにがあっても金利は上げないという姿勢を貫いているわけだ。
とはいえ、世界的なインフレ圧力で金利上昇は止めようがない流れとなっている。
それに対し、日本的な事情で金利を上げないと突っ張っても、大河の滔々たる流れには逆らえようがない。
ちなみに、昨日の米国の長期金利は4.23%となり、日本の0.25%とでは、なんと3.9%の開きとなっている。
これでは、水が低きに流れるように、米国の長期金利に日本のマネーが引き寄せられるのは、止めようがない。
それが円安を招いているわけだし、いずれ国内のカネ余りも是正され市場からの金利上昇圧力となっていこう。
いずれにしても、日本の不健全きわまりない財政運営や日銀の財務肥大化には、もう限界に近いと考えるべきだ。
なにしろ、世界的なインフレ圧力による金利上昇という刃が突き付けられているのだ。
どこかで日本の金利も噴き上がるのだろう。 そして、金融マーケットのみならず日本経済や社会は大きな混乱下に叩き落されるのは避けられまい。