イタリアの総選挙で、右派勢力が過半を制した。 極右を含めたイタリアの政治体制には、いろいろ懸念される。
報道によれば、次期首相に目されているメローニ氏は、もともとEUの経済政策に対しては批判的である。
英国に次いでEU離脱とまでは考えていないのかもしれないが、EUの結束にはブレーキとなろう。
それはとりもなおさず、対ロシア経済制裁に関してもEU一丸となった強硬姿勢にも影を落とすことになる。
面倒なのは、プーチン氏の盟友ともいわれている、ベルルスコーニ元首相の影響も大きくなることだ。
南イタリア中心にした経済的弱者の不満を代弁するかのような強硬な政治主張で、ベルルスコーニ氏は隠然たる存在を誇っている。
ポピュリスト政治の厄介なところは、人々の耳に心地よい発言でもって選挙民の支持を集めることだ。
そこが民主政治の最大の弱点で、政策がその場しのぎと、易きに流れることで、経済をどんどん弱体化させてしまう。
いま、その傾向がどんどん強まっている。 世界的なインフレ圧力が高まっている中、生活者全般の経済負担は大きくなっている。
それが、ポピュリスト政治を助長しがちとなる。 フランスでもスウェーデンでも、右派勢力の台頭は目覚ましい。
経済的に厳しくなればなるほど、ポピュリスト的な政治発言に、どうしても支持が集まりがちとなる。
それが、どのような結果を招くかなどには、人々の関心はいかない。
新しく英国の首相となったトラス氏の大幅な財政バラマキ政策も、ポピュリスト政治の典型である。
いくら経済活動を刺激するといっても、大規模な減税や予算バラマキは、それでなくても悪化していた財政をさらに傷みつける。
それを察知したマーケットは英ポンド売りに走り、1070年代以来の安値にまで英ポンドは売られる始末。
英ポンド安に対し、すかさずイギリスの金融当局は大幅な利上げを辞さないと発言している。
財政悪化の加速に対し利上げを強行すれば、どうなるか? 英国の財政は一層の苦境に陥る。
そんなこと、分かりきったこと。 しかるに、ポピュリスト政治は先のことなど無視で、ひたすら人々の迎合を集めるのに汲々としている。
本当の政治は、国民に一時的な窮乏生活を強いても、将来に向けて健全な経済を建設していこうと訴えることだ。
その意味でも、インフレや金利上昇圧力は実体経済からの刃であって、それを踏まえた上での合理的な政策が求められる。
たとえ逆らったとしても、経済合理性の圧力には、いかなる為政者の力も及ばない。