投資家や市場関係者は往々にして、ここ10年20年ぐらいの相場水準をもって、投資判断をしがちである。
それを、地相場というか、それほど違和感のない相場水準といった捉え方をするわけだ。
違和感のない、つまりここから先の上昇相場を想定する上で、そのベースと考えたくなる相場水準だ。
たとえば、1966年ごろから82年の8月まで、NYダウ平均株価はずっと1000ドル前後を行ったり来たりしていた。
それが、2000年には1万ドルを超えた。 1000ドル前後をウロウロしていた頃からすると、夢のような相場水準である。
かつては、1万ドルが夢のようだった相場水準が、いまやなんと3万ドル超えだ。
となると、1万ドルはもちろん1000ドルの水準なんて、悪夢以前の問題となる。
もちろん、株価は企業の長期的な利益上昇を反映してくるから、趨勢的に右肩上がり上昇はあっておかしくない。
現に、1960年代からみるに、米国経済は何倍にも大きく成長している。 伸びる企業はもっと伸びている。
では、NYダウ平均株価が現在の3万2000ドル水準から、4万ドル5万ドルを目指して上がっていくのだろうか?
投資家や市場関係者は、現水準あたりで値固めを続けてくれれば、それが地相場となっていく。
このあたりが、冒頭に書いたここ10年20年の相場水準が、地相場といった感覚となっていくだ。
そして、そのうち次の上昇トレンドがやって来ると想定したくなるもの。
ところが、われわれ長期投資家からすると、3万2000ドル超えのうち成長部分とカネ余り部分とを分けるべしとなる。
2万ドル台だった米国の平均株価が、あっという間に3万ドルを超えていった。
凄まじい株価上昇を裏付けた大きな要因として、先進各国の中央銀行が胴元になって株高を煽った面が大きい。
ところが、ここへきての金利上昇という逆風は、マネー膨れしてきた株価にはとりわけきつい寒風となる。
まず間違いなく、株価全般は大きく水準を下げよう。 それだけ、金利上昇の刃はきついと考えておいていい。
史上空前ともいわれたカネ余りによる株価上昇部分は吹っ飛ぶとして、成長部分はどうなのか?
そこが、まさしく長期投資家が拠って立つところとしている、実体経済である。
インフレが来ようと金利が上昇しようと、人々の毎日の生活は消えてなくならない。
人々の生活を支える企業活動も、一時として止まらない。 たとえ、カネあまりバブルが吹っ飛んだとしてもだ。
カネあまりバブル経済と思われる部分を、きれいさっぱりと削ぎ落としてみよう。 そしたら、実体経済が見えてくる。