マーケットでの買い人気が高まって、投機熱があまりに激しくなると、どこかで大きな反動を食らう。
買って買いまくってきたものの、少しずつ買いが続かなくなってきて、上昇の勢いが鈍る。
逆に、これまで積み上がってきた買いポジションの重さが、潜在的な売り圧力となっていく。
そして、さしもの上昇相場も、どこかで売り逃げに一転する。 まるで、手のひらを返したように。
これを、市場からのしっぺ返しという。 マーケットは、突如として大きな下げ要因に襲われたかのような混乱をきたす。
なんのことはない、ここまで買って買いまくってきた間に、静かに積み上がってきた売りのマグマが噴き出しただけのこと。
いってみれば、どんなものごとでも一方に寄ればよるほど、逆方向に戻ろうとするエネルギーが蓄積される。
そして、どこかで逆方向に向かおうとするエネルギの爆発をみる。 そういった反転エネルギーの爆発が、市場のしっぺ返しだ。
しかし、よくよく考えてみれば、経済合理性の働きである。 すなわち、高くなり過ぎたものは売られて下がる。
売られすぎたものには、値ごろ感から買いが入り始めて、価格も上昇に転じていく。
同じような市場からのしっぺ返し現象は、経済の現場でも見られる。
たとえば、これまで史上空前の金融緩和で大量にバラ撒かれてきたマネーで、買い上げてきた株式や債券市場だ。
いまや、世界的に天文学的な金額の買い残となっている。 その重みが、じわじわと効いてくるのは避けられない。
それが、以前から主張しているように、金融緩和バブルの崩壊へとつながっていくのだ。
一方、ゼロ金利とマネーの大量バラマキ政策の反動も、あちこちで噴き出てきている。
反動の代表が、世界的なインフレ圧力の広がりとなって、米欧の中央銀行に金利の引き上げを余儀なくさせている。
一人、日銀だけが金融緩和政策に固執しているが、そういつまでも流れに逆らえはしないだろう。
理由は簡単で、米欧と日本との金利差が広がれば、その差を突いた投機が世界規模で襲ってくる。
いかに日銀といえども、世界的な金利差による円安や輸入インフレ圧力には屈せざるを得まい。
先週の記者会見で、黒田総裁が金利が上がりだすと住宅ローンを抱えた人々が大変なことになるといった発言していた。
その裏には、金利上昇で日銀や国の財政も大変なことになるというニュアンスもあるのだろう。
それらも、市場のしっぺ返し、つまり経済合理性の働きには逆らえない。
ひどい混乱は避けられないが、これも経済健全化への避けて通れない道である。