しばらく前まで、マイナス金利の国債に17兆ドル(1800兆円)を超す資金が買い群がっていた。
最近はあまり騒がれなくなってきているのをみるに、買い残高は大幅に減少してしまっているに違いない。
それはそうだろう。 米国で2%強、ヨーロッパで1%前後も金利が上がってきている。
ずっと保有を続けていたなら、いまごろ巨額の評価損を抱えて、投資家たちは悲鳴をあげていたはず。
とはいえ、マイナス国債の買いポジションを大幅に引き下げるにあたっては、相当な実現損が出ているのは容易に想像がつく。
マイナス金利国債に買い群がった17兆ドルの資金が、大幅な評価損や実現損を余儀なくされたわけだ。
それはそのまま、資金の蒸発を意味する。 カネ余りの勢いで買い群がったのはいいが、結果として巨額の損失を計上したのだから。
これは、ほんの一例である。 昨日は米国の長期金利が3.36%にまで上昇した。 EUでも金利は上昇気味である。
ということは、これまでのゼロ金利に踊ってきた世界の資金が、金利上昇の分だけ巨額の目減りをきたしているわけだ。
投資家にとっては投下資金の目減り、市場においては買い群がってきたマネーの縮小を意味する。
そう、あれほどのカネ余りが、いまや投資損失としてどんどん蒸発していっているのだ。
このあたり、世界の投資家たちはまだ甘くみているようで、一向に総売りにつながっていかない。
もう、金融緩和バブルは大崩れに入っていっていておかしくないのに、小幅な下げに終始している。
まあ、世界の投資家たちの奇妙なまでの落ち着きは、横へ置いておこう。
世界的なインフレ圧力をみるに、金利はまだまだ引き上げられる方向にある。
となると、史上空前のカネ余りは、この先もどんどん縮小を余儀なくされうのは間違いない。
その過程で、債務超過に陥った企業の倒産や債券のデフォルト(債務の支払い不能)に陥るケースが多発しよう。
企業倒産や債券のデフォルト発生は、そこで生じる損失分だけマネーの蒸発を意味する。
つまり、市場に群がっていたマネーはみるみる締まっていき、金利はどんどん上昇していく。
もちろん株式市場や債券市場は、どこかで堰が崩れたような暴落となっていく。
酷いことになったと大騒ぎしてだして、ようやく世の中は金融緩和バブルが崩壊したと認識するのだろう。
この展開を、われわれ本格派の長期投資家は準備万端で、静かにみつめていよう。