長いことやってきたプライベートバンキングで、鉄則として学んできたのが表題の言葉だ。
よく資産形成というと、いかに効率的に資産を殖やすか、その方法や手段が大事とされる。
この30年ほどは、効率的市場仮説やらモダンポートフォリオ理論やら、どんどん学術的になっていっている。
それも言ってみれば、世界の債券や株式市場が歴史に例をみない上昇相場が40年も続いたからのこと。
そのあたりは、この長期投資家日記で折にふれて書いてきた。 世界の運用者にとっては、実に幸せな40年間だったのだ。
ところが、ここへきてインフレの到来懸念やら、地政学的なリスクが浮上してきた。
いまはまだ嵐の前だから、世界のマーケットものんびり構えているが、そのうち嫌というほど思い知るだろう。
なにを、思い知るのか? 資産はやみくもに増やすのではなく、保全しつつ殖やすことの重要さをだ。
資産の保全? そう、不可抗力的な出来事に直面しても、資産が価値を発揮できるようにしておくことだ。
いざという時に、つかいものにならない資産など、なんの価値もない。 存分につかえてこそ、真の資産のはず。
その保全だが、重要度によっての順番がある。 第1が、戦争に対してだ。 第2が、インフレに対して。
第3が、社会の不安定化に対して。 そして、ようやく第4第5になって、金利変動や景気変動がくる。
通常の投資運用においては、第4第5順位の金利や景気変動に主眼を置いて、ああだこうだとやっている。
ところが、本格派のプライベートバンキングでは、片時も第1から第2第3までのリスクを疎かにしない。
それらのリスクが表面化してからでは遅い。 資産が大きくなればなるほど、そう簡単には保全へシフトできないのだから。
いま、まさにウクライナ問題が浮上してきた。 戦争だ。 そして、インフレも台頭してきている。
これは、戦火に脅えるウクライナの人々だけの話ではない。 世界中の個人にも機関投資家にも言えることだ。
大きな嵐が迫ってきているのだから、投資してきた資産を、どれだけ速やかに資産価値の保全へとシフトできるかだ。
もちろん、一刻早く売って、バブル投資から離れてしまうことだ。 いまの間なら、売れる。
とはいえ、売ったからといって、現金を持っていれば安全というわけではない。 インフレが迫ってきているのだ。
資産の置き場所が問題となってくる。 ここまで書いてくれば、われわれ本格派の長期投資家が、どれだけ安全な立ち位置にあるのか、納得できよう。