以前から主張してきたインフレ到来だが、かなり現実性が高まってきている。
とはいえ、インフレといっても一時的な現象にすぎないとみている人が多数派だろう。
それもあって、米FRBのパウエル議長が利上げを発表したが、株式市場では敬意を表しただけだ。
敬意を表した? 先週までの1週間ほどは、金融の量的緩和の終了と利上げ発表に株価全般は急落した。
しかし、今週に入ると株価は早くも急反発に転じている。 インフレ警戒も利上げも、すべて織り込んだという感じだ。
甘いと思うよ。 インフレも利上げも、これから圧力をどんどん増していくというのに。
そのインフレだが、50年ぶりの本格的なものに発展していく可能性が高い。
そう、1973年1月の第1次石油ショックで、戦後ずっと1バレル3ドル以下だった原油価格は、10~11ドルに跳ね上がった。
そして、79年末から80年初にかけての第2次石油ショックで、原油価格は30~34ドルへと引き上げられた。
エネルギー価格が10~11倍にもなれば、もう否応なしであらゆる価格は上がってしまう。
コストプッシュ型インフレの典型だ。 それで、世界経済は高インフレと金利高に襲われ、ガタガタとなった。
米国政府が公式に景気回復を宣言したのは、1992年8月のことだ。 実に長い間、景気は低迷した。
今回のインフレも、コストプッシュ型になる展開で進みだしている。 一方的かつ強引に価格上昇を飲ましてしまうインフレだ。
さすがに、石油ショックのような有無を言わさない大幅値上げは、いまのところ想定できない。
ただ、世界のあちらこちらで、コストプッシュの可能性が高まっているのは間違いない。
コロナ禍で、世界の供給体制が分断された。 それが、モノ不足や働き手不足を引き起こし、インフレ要因となってきている。
いわゆる、サプライチエーンの分断だが、これはコロナ禍の一過性の問題ではない。
21世紀に入って、世界経済のグローバル化が進み、安い労働力をベースとした製品が世界市場を席巻した。
それに対し、自国中心主義の台頭がグローバル化に水をさし、米中の覇権争いで世界のサプライチエーンに制約がかかってきている。
これらは、グローバル経済化の反動で、どちらもコストプッシュの価格高を招く要因になっていく。
あるいは、民主国家がポピュリズム的で優柔不断になるにつれて、世界各地で強圧的な政治が台頭が著しい。
世界の警察官を自認してきた米国の存在感が薄れていくのを待ってましたかのような、地政学的リスクが高まっているわけだ。
また、脱炭素で化石燃料への投資が急減している。 これが、石油やLNGの価格のじり高につながっている。
といった具合に、コストプッシュの芽が世界あちこちで顔を出してきている。
案外と、根の深いインフレ要因となって、世界経済を脅かそう。