いま執筆中の「インフレ不可避の世界」(仮題)では、表記の章立てで、まるまる一章をあてる。
大体、こんな感じだ。 ここまでの40年間は、世界の運用にとって異常なほど幸せな時代だった。
つまり、株式市場も債券市場もずっと右肩上がりで、長期金利はずっと下降してきている。
その間に、幾度となく波乱局面を迎えたが、いずれも軽々と乗り越え、その前よりも高値を追う展開となっている。
ということは、世界の運用者にとってはずっと右肩上がりトレンドに乗れていて、実に幸せな40年間だったと言える。
先ずは、73年11月の第一次石油ショックから本格化した世界的な過剰流動性の積み上がりが、ずっと続いている。
経済の現場や市場内では、常に行き場を求めて止まないマネーの量が、どんどん増加してきているわけだ。
この過剰流動性の積み上がりが、株式や債券投資を巨大な岩盤として支え続けてきたと言えよう。
次に年金だ。 国民皆年金の制度が先進国を中心に60年代終わりごろから整備されていった。
それにつれて、年金資産が急速に積み上がっていって、80年代半ばには世界最大の運用マネーとして躍り出てきた。
後から後から積み上がってくる年金マネーが、株式や債券をどんどん買い上がっていった。
年金マネーの恒常的な買い上りが、株式市場や債券市場でずっと右肩上がりのトレンドを描かせる最大の要因となっていった。
そこへ、長期金利の83年からずっと続く下降トレンドが、株式投資や債券投資の買い方に、最大の安心材料となった。
世界の運用者にとって、どれだけ幸せな状況が40年間も続いたか、お判りだろう。
さて、ここからが本論である。 そういった幸せな状況が、間もなく崩れ出そうとしている。
どんどん膨れ上がってきた過剰流動性は、50年ぶりのインフレを招こうとしている。
そして、それは長期金利の上昇に直結していく。 債券はもちろん、株式投資にとっても大きな悪材料となる。
また、年金制度が整っている先進国はどこも高齢化で、9~11年前から毎年の積立額より給付額が上回りだしている。
ということは、これまで株式や債券を買い増す一方だった年金マネーも、いずれは売り越しに転じる。
そう、間もなく到来する金融バブル崩壊が「世界の運用にとって幸せだった40年間」に、終止符を打つことになるのだ。
すさまじい暴落相場となるのは避けようがない。 そして、世界の運用者たちにも鉄槌が下される。
鉄槌? そう、この40年間やってきた自分たちの「運用」やら投資理論が根底から崩れ去るのだ。
さあ、どうやって切り抜けるのか見ものである。 一方、われわれ長期投資家は何ら慌てることもない。
世界の運用が、われわれ本格派の長期投資家に向かって押し寄せてくるのだから。