投資運用において、早すぎて失うものはない。 得べかりし利益が減るだけである。
逆に、後れを取ると損失の山に見舞われる。 そして、早めに売っておけばよかったと後悔にさいなまれる。
そこで、NY株式市場などでは昔から、「ブルもベアもいいが、ピッグにはなるな」といわれるわけだ。
ブルつまり強気、あるいはベアつまり弱気で、相場に参入するのはいい。 しかし、いつまでも餌を漁ろうとする欲の出しすぎは厳に戒めている。
現在進行中の世界的な金融バブルでみると、債券も株式も天井知らずの上値追いを続けている。
世界的なカネあまりをいいことに、どの投資家も「売りなど、出っこない」と、安心しきって買い参加している。
ここで考えたいのは、昔からいわれている「ピッグになるな」の教えである。
たしかに、このバブル株高どこまで行ってしまうのか、予測もつかない。 米国株などは連日の高値更新で、崩れる気配はどこにも感じられれない。
しかしだ、NYダウ平均株価でみると、かりに昨日の31,041ドルから35,000ドルまで上昇したとしても、12%の上昇でしかない。
ここでピッグのように買い漁ったところで、あとどれだけ食い物が残されているのか、神のみぞ知るのところ。
そんな心もとない上昇余地に賭けるよりも、いずれ来る下落リスクを回避しておく方が、よほど賢明である。
かりに、NY平均株価が27,000ドルまで下がれば、13%のマイナスとなる。 25,000ドルで20%のマイナスだ。
実は、バブル崩壊となるとそんな程度のマイナスでは済まされない。 株価は下がっても、売るに売れない投資残を抱え込んで身動き取れなくなる。
株価全般が大きく下がったのに、そこをバーゲンハンティングの買いに入るどころの話ではない。
大きな評価損を抱えた保有株をどう売るかで苦労する一方で、現金づくりの売りで株価をさらに押し下げる役割を果たさなければならない。
大きな資金を運用しているところほど、二重苦三重苦の地獄絵をのたうち回ることになる。
その点、早めに次の展開にシフトしていた投資家は、たっぷりと利益確定してあるし、いくらでも買い参加できる。
この違いは、決定的である。 そこが、われわれ本格派の長期投資家と、毎年の成績を追い回す機関投資家との違いとなってくる。
彼らは成績を追いかけ続けるが故に、バブル株高でも途中下車できない。 そして、バブル崩壊後は巨額の損失を抱えて、のたうち回ることになる。