ヘリコプターマネーを信じる不思議

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ヘリコプターで上空から農薬を散布するように、お金を国民の間にバラ撒いてやれば、それが消費につながって経済活動は活発化する。

そういった考え方が、じわじわと広がってきている。 生活困窮者に最低限の生活保障をする制度は、前々からある。

それをもっと大々的かつ広範囲にやって、経済活動を高めろというのが、ヘリコプターマネーの考え方である。

とにかく、お金を大量にバラ撒いてやる。 そうすれば、国民の間で消費マインドが高まり、経済活動を活性化させられると彼らはいう。

表面的には、その通りだろう。 ただ、本当に消費にまわるのかは、別の問題となってくる。

もしかしたら、将来への備えとして預貯金に収まってしまかもしれない。 そうなったら、なんの経済効果をもたらさない。

とりわけ、日本ではその恐れが多分にある。 現に、バブル崩壊後30年で、個人の現金・預貯金残高は500兆円以上も膨れ上がった。

将来が不安ということだったが、もし消費に向かっていたならば、それだけでも単純計算ながら日本経済は3.2%の成長を続けられたはず。

それ以上に、もっと根本的な問題がある。 お金をバラ撒けと気楽にいうが、そのお金は一体どこから来るのか?

もちろん、国がバラ撒く。 国庫に潤沢に溜め込んである資金を放出するならまだしも、国債などを発行してとなると問題である。

国の借金を増やしながら、それを国民にバラ撒いてやれば消費も高まると期待するのは、甘い考えにすぎる。

ヘリコプターマネーの信奉者は、消費が高まれば経済活動が活発化し税収も増えるから、バラ撒いたお金は国庫に回収できるという。

それに対し、庶民感覚的には国の借金のさらなる増加は、一層のツケが回ってくるという危惧を抱かせる。 気楽に消費拡大というわけにはいかない。

そもそもからして、タダでもらったお金をつかえば、経済は拡大し皆が豊かになれるなんて、マネー信奉者の論理にすぎない。

そんなこと言っていたら、誰もまじめに働かなくなる。 遊んでいてお金がもらえ、それでもって暮らしが成り立ち、将来の心配もない理想郷なんて、誰も信じない。

信じないどころか、そこに潜む落とし穴に対する、本能的な警戒感が高まるだけだ。