明治以来、国民の間に植え付けられてきたのが、以下の4点である。
まじめに働き、必要なモノは買うが、ムダ遣いはせず、あまったお金は貯蓄しておく、これを国民の間に徹底させてきた。
たしかに、欧米の帝国主義列強の間で独立を保っていくには、経済力と軍事力を高める他はない。
そのためには、国民がまじめに働き、貯蓄に努めることが絶対条件である。
国民がまじめに働き、節約に努めることで、国力は高まるし国内の資本蓄積が進む。
戦後復興も、まったく同じである。 がれきの山から経済建設を進め、なけなしの国内資金を有効に産業復興にまわす。
それには、上に書いた4つの条件が必須である。 そのおかげで、日本は世界第2位の経済大国にまで上り詰めることができた。
ここまでは、完璧だった。 日本はほとんど国内資金でもって、世界有数の経済を築き上げた。
これは、世界の歴史を振り返っても例外に近い。 海外からの資本に頼ることなく、乏しい国内資金を高速回転させた成果だ。
いまや、その4条件が日本経済のブレーキとなってきている。 いや、国民がまじめに働き、貯蓄に努めるのは、いつの時代でも必須である。
ただ、成熟経済となった現在、必要なモノは買うという点が、耐久消費財を中心に買い替え需要に変わってしまった。
となると、もう買うモノがないからと、個人消費はかつてほどの勢いがなくなり、むしろ低迷してしまう。
そこへ、国民の間に浸み込んでいる、ムダ遣いはしないが効いてくる。 国民が、お金をつかわないのだ。
モノへの消費が低水準となったところへ、ムダ遣いはしないが乗っかってくれば、個人消費は低迷するに決まっている。
現に、成熟経済となって30年たったが、この間に膨れ上がった個人の現・預金勘定は500兆円を超す。
高度成長期には、耐久消費財など消費にまわっていたはずのお金が、預貯金に向かってしまったのだ。
もし、そのお金がそれまで同様に消費へ向かっていたなら、単純計算ながら日本経済は年3.4%成長していたはず。
ということは、日本経済の規模は1400兆円近く、いまだに中国といい勝負をしていたことになる。
ひとえに、国民が「ムダ遣いはしない、あまったお金は貯蓄にまわす」を、金科玉条のように守ってきたからだ。
どうしたらいい? もう買い替え需要主体は変わらない。 したがって、国民がよほど意識して、お金をつかうことだ。
つまり、モノではないことにお金をつかう価値観を、新たに築いていくしかない。
それは、決して無駄遣いではない。 成熟経済となった以上は、なんとしてでも確立しなければならない、経済建設のテーマだ。
だから、さわかみグループは「カッコ好くお金をつかおう」という、社会提唱を続けているわけだ。
提唱しつつ、先頭に立って実践している。 今日はいまから、徳島へオペラ公演に行く。
徳島市民を数多く巻き込みながら、いまや8月の阿波踊りに続く、毎年恒例の12月イベントになってきている。
これも、意識してお金をつかうというテーマに沿った、人生の楽しみ方だ。