米国の長期債利回り(10年物)が、昨日は一時的に1.59%にまで下がった。
米中の貿易戦争に収拾がつかず、ドル安やら中国元が売られたりやらで、株価は大きく売られた。
それを見て、世界の機関投資家マネーはリスク回避とばかり、債券買いに走った。
ホットマネーが向かうのは、安全資産とされる米国債、ドイツ国債、そして日本国債だ。
その結果、ドイツ国債や日本国債はマイナス利回りとなり、米国の長期債利回りの急低下につながっている。
世界の機関投資家マネーからすると、米国債や日本国債は流動性も高く、格好のリスク回避手段とされる。
ここで要注意なのは、本当の意味での安全性は案外と度外視されていることだ。
現に、米国は世界最大の債務国であり、日本の財政赤字は先進国で最悪を独走している。
米国債も日本国債も、発行体である国の財政状況は著しく悪い。 にもかかわらず、巨大な経済を背景とした信用力でもって安全とみなされているわけだ。
しかしだ、その安全性とやらは機関投資家にとっては嬉しくもない悲惨な現実となるリスク大である。
ちなみに、超のつくような悪性インフレが到来したら、両国の巨額な借金は大幅に目減りする。
国の借金負担は劇的に軽くなるが、年金生活者や預貯金者は生活苦や財産の喪失に遭遇する。
機関投資家にとっては、リスク回避のはずの国債への逃避が、悪性インフレで市場金利は暴騰し、保有債券で巨額の損失を蒙る。
われわれ本格的な長期投資家からみるに、そんなリスク回避など超のつくほどお粗末な投資行動とこき下ろすしかない。
そもそもからして、米中の貿易戦争とやらで、株価が大きく下げたら目いっぱい買っておけばいいではないか。
なにがあっても世界経済はなくなりっこないし、企業の生産供給活動は続く。
そういった企業の株式を安く買い仕込むのだ。 これほど安全な投資はない。
財産の置き場所としても、一番安全である。 それでいて、悪性インフレとやらが到来しても、それに乗れてしまう。
われわれ、さわかみファンドからすると、そういった展開は将来の読み込みの一部が現実化するにすぎない。
なにも慌てないし、むしろそういった大混乱でこそ、長期投資の真価発揮とばかり、いまから腕を撫している。
ともあれ、機関投資家はしょせん他人の財産を預かって、目先の運用を担当しているにすぎない。
どこまで長期視野で、本気になって顧客資産の価値保全と増殖に責任をもとうとしているかとなると、どうにも心もとない。
そんな彼らが、世界の巨額資金のほとんどを運用(?)しているのだ。