以前にも書いたことがあるが、長期投資家はいつも10年ぐらい先までのことを、ひとまとめにして考えるようにしている。
とりわけ、ここから10年ぐらいの間に起こるであろうリスク要因を徹底的に洗い出して、それらをことごとく投資対象から切り落としてしまう。
この作業を随時しておけば、投資で大けがさせられるリスクはほとんど消し去れる。 その上で、切れ味の良い堂々たる長期投資を展開するのだ。
ためしに、ちょっとやってみようか。 先ずは、ここから10年ぐらいの間に起こり得る経済の変化を考えてみる。
社会の先行き変化となると読みにくいが、経済は案外と簡単である。 なにしろ、どんな経済活動にも時間の経過とともに、経済合理性というものが必ず働くからだ。
経済合理性? そう、経済活動はすべて需要と供給のバランスの上に価格が形成され、その価格が情報となって次なる経済活動が織りなされていく。
ところで需要と供給だが、その時々の力関係によって、一方向へ大きく傾くことがある。 すなわち、需要が強いと価格は上がるし、供給が多すぎると価格は下がる。
そういった価格の変化によって、需要と供給の力関係が自然と調整されていくわけだ。 それをもって、経済合理性が働くという。
さて、いま供給がやたら多いのはなにか? 国債とお金だろう。 国債は大量発行が続いており、残高は900兆円を大きく超えている。 お金も史上空前の資金供給とかで、どんどんバラ撒いている。
となると、経済合理性の観点からは、供給過剰から国債の価格はどこかで必ず下がるはす。 お金の価値も下がるのは避けようがない。 それでもって、需要と供給のアンバランスが調整されるのだ。
問題は、その調整作用がいつ起こるかだ。 これは誰にもわからない。 はっきりしているのは、このアンバランスがどんどん加速しながら、今後10年も続くなんてのはありえないこと。
どこかで、国債価格やお金の価値の下落という現象が発生する。 これだけ長く、これだけ一方向へ傾いていたアンバランスが調整されるとなると、反対方向への振れもそれだけ激しくなる。
そう、ここから10年ぐらいの間に国債価格は暴落するだろうし、お金の価値の下落によるインフレの到来は不可避であろう。
ここまで考えたら、国債の保有は一刻も早くゼロにし、インフレに強い企業に狙いを定めて株式投資のウエイトを上げておこうと、投資戦略を絞り込める。
どっちみち、この超低利回りでは国債の投資魅力など、ゼロに近い。 現金を抱えていても、利息は無いに等しい。
だったら、もっとましな方へ資金を振り向けようと誰もが考える。 そういった考えが表面化してくるのも、経済合理性のしからしめるところである。
いまは、嵐の前の静けさとでも言っておこう。 行き過ぎたものが逆方向へ振れるときは、すさまじい反動となる。 それは、歴史で幾度となく繰り返してきたこと。
いざ嵐が到来しても、長期投資家は準備万端でマーケットの大混乱を乗り越えていくことになる。 それは、10年ぐらい先までに起こり得る混乱を、すべて削ぎ落としてきているからだ。
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