町工場の衛星ビジネス

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 昨夜は2か月に一度くらいのペースでやっているサロンに7人が集まった。 ワインを楽しみながら経済や社会そして経営をじっくり話し合おうというもので、町工場や中堅企業の経営者も3名いて広範囲の話題で盛り上がった。

 とりわけ昨夜はメンバーの一人が率いる会社が制作した衛星がロシアで打ち上げられ、それが無事に人工衛星として交信が開始できることを祈りながらのサロンだった。

 ロシアで打ち上げられたミサイルを改良したドニエプル型ロケットは無事に衛星を軌道に乗せてくれた。  そこから4時間後の午後8時40分ごろには信号を受信するはずということで、固唾をのんで報告を待った。 9時半過ぎにようやく成功を確認できて、乾杯乾杯となった。

 その会社は人工衛星のケースを制作した。 得意の金属削り出しの高度な技術が買われて、ジュラルミンを主体とした特殊金属で衛星の箱型ケースを作ったとのこと。

 箱型ケースは厚みのあるところと薄くてもよいところもあって、それを自由自在に対応できる削り出し加工の独壇場である。 人工衛星としてはできるだけ軽く、しかし強度のあるものを作らなければならない。 その要請に応えたのが高度な削り出し技術である。

 軽く裏話を語ってくれたが、同じケースを作って振動や温度変化など、ありとあらゆる強度実験を重ねたとのこと。 万全の準備を経て、自信をもって衛星のケースを納入した。

 それでも、無事に人工衛星として役割を果たしてくれるのを確認できるまでは、やはりハラハラドキドキである。 ロケットの打ち上げは成功したとしても、無事に交信ができなければ何の意味もない。 衛星ケースに支障があれば、その会社の技術に対する信用もガタ落ちとなる。

 サロンのメンバーの皆が成功を祈った。 そして無事交信を開始。 成功だ。 ワインもう一本抜栓して乾杯だで夜も更けていった。

 お付き合いのある町工場はいずれも世界でここしか作れないという技術を持っている。 その技術を求めて世界から制作依頼が舞い込んでくる。 特注の製品だから数はあまり出ない。 経営的には厳しいものがあるが、そこを乗り越えて社員や技術を守っていかなければならない。

 経営者として強い意思と挑戦意欲、そして情熱と努力が四六時中問われるわけだ。 そんな経営者同士が、時にはサロンでの交流もあっていいだろう。