製造業の空洞化が懸念されるようになって久しい。 久しいといいたくなるほど長いこと空洞化が騒がれている。
空洞化をを騒ぐ割には、一体なにをそうも懸念しているのか、いまいちはっきりしない。 ひとつの減少としては、日本の工場の海外移転がある。 機械設備などまで移してしまうと、国内の工場はがらんどうで、それを見ると落ちぶれ感が漂って涙したくなる。
しかし、工場移転しているのは企業であって、単に経営上の判断で生産設備を国内から海外へ移しただけのこと。 企業としてのビジネスは続く。 それどころか、いま需要が爆発している国々へ移した工場はフル稼働で、海外移転は大成功だったというケースが続出している。
もちろん、従業員は全員が海外へ移住するわけではないので、国内雇用はかなり失われる。 しかしだ、その企業がずっと国内にとどまってジリ貧ビジネスに沈んだ挙句、倒産に至ったらどうなるだろう。 すべての雇用は失われる。 それに反し、企業が工場を海外移転しても、本体が潰れずに頑張り抜けば相当の雇用は守れる。 どちらの方が賢明だろう?
問題は、国内の需要構造が変わってきているところにある。 テレビや自動車など、ほとんどの耐久消費財は日本の各家庭に行き渡ってしまった。 もうこれからは、せいぜい買い替え需要しか期待できない。 となれば、国内に工場を置いておいても輸出用の製品を大量生産するしかなくなるが、円高に振れると採算は一気に悪化する。 だったら、輸出する代わりに需要が爆発している海外へ工場を移す方が、手っ取り早いとなっておかしくない。
そこまではっきりさせれば、次なる課題はいかにして新しい産業を勃興させるかであろう。 どれだけベンチャービジネスの台頭を促がすかでもある。 そこでネックとなるのが資金調達だ。 新しい産業を興すにも、ベンチャー企業を続出させるにも、リスクを取れる資金がふんだんに供給されなければならない。 そこに、長期投資家の存在が大きくクローズアップされてくる。
日本ではすぐ国が先導してとなるが、役所のやることはスピード感にかける。 分厚い書類作成も大変である。 よほど巨大なプロジェクトは別として、大半は民間でやってしまったほうが早い。 どうせ事業を興し運営するのは民間サイドなんだから。 残るは、国が資金を出す代わりに、いかに民間で事業資金をどんどん提供できるようになるかだ。 やはり、長期投資家の出番である。
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