ドイツに学ぼう

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 しばらく前に、1996年から政権についたドイツのシュレーダー首相が断行した政治改革のことを書いた。 東西ドイツ統一後の長期低迷と停滞で、欧州の病人とまで揶揄されていたドイツを、今日のヨーロッパで一人勝ちの状況にまで持っていった。

 どちらかというと労働者よりの社民党政権であったのにもかかわらず、解雇規制の大幅緩和など抜本的な労働改革を進めて、ドイツ企業の経営自由度を高めた。 その横で、国が前面に出て職業教育など再雇用を促進させるよう、いわゆるセーフティーネットを手厚く施した。

 改革の当初こそ解雇による失業の大幅増加を懸念する声が高かったが、労働者の再教育が進むにつれ失業率はどんどん下がっていき今日に至っている。

 なによりも、ドイツ企業ががんじがらめの労働規制から解放されて競争力を一気に回復させ、それがドイツ経済の驚異的な回復につながっていった。 当然のことながら、雇用も大幅増加した。

 他にも、大銀行による企業支配がドイツ経済に重くのしかかっていたのを、シュレーダー政権は一掃させた。 銀行に対し保有株の放出を迫り、その代わり売却益課税はゼロにするという太っ腹な政策を断行したわけだ。 これも、ドイツ企業の自立意識を高めるのに大きく貢献した。

 シュレーダー改革は2005年ぐらいから著しい効果をドイツ経済や社会にもたらし始めたが、その寸前に総選挙で社民党が敗れた。 代わって登場したメルケル政権が、大改革の果実を享受するといった皮肉な結果となっている。

 ともあれ、日本の政治家がシュレーダー首相に学ぶところは山ほどあるはず。 さて、今日はもっと前のドイツ改革について触れてみよう。 こちらも徹底している。

 1970年代に入って、ドイツは国民生活の柱となる政策を180度転換させた。 戦後からずっと最優先させてきた国民の住宅取得を支援する方向から、投資による財産形成に大きく舵を切ったのだ。

 政策発想のそもそもは簡単明瞭である。 ドイツ国民の住宅取得は概ね行き渡ったから、いつまでも住宅減税ではなかろう、次は資産形成を促進させるべく投資減税を国民生活の柱にしようということだ。

 ここらあたりが、日本との違いである。 もう4年以上も前の統計で既に空家比率が13.8%、つまり755万戸が空き家となっている。 そして人口は減っていく日本なのに、相も変わらず住宅取得を促進する政策発想にこびりついている。 返す刀で、投資減税は金持ち優遇だの言葉で思考停止しているのだ。

 ドイツの投資減税による資産形成の道は単純ではなかった。 1987年のブラックマンデー、2000年に入っての IT バブル崩壊、2008年のリーマンショックと大きな荒波を3度も食らっている。 それでも着実にドイツ国民の投資や投信購入による資産形成は増加トレンドをたどっている。

 残念、いまから出張。 この続きは、明日の夕方書こう。