昨日は海外市場で円はドルに対して90円台をつけた。 なんだかんだ言いながらも、この1か月ちょっとで10円以上の円安になっているのだ。 それを歓迎するかのように株式市場は沸いている。
1ドル90円あるいはもう少し円安になると、輸出企業は有利にビジネスを展開できる。 もちろん、採算も大幅に向上する。 それもあって、輸出関連企業の株価の戻りは急ピッチである。
一方、円安傾向は輸入価格を押し上げる。 日本はエネルギーや資源そして食料などを大量に輸入しているから、円安になればなるほど海外への支払い負担が重くなってしまう。 同時に、国内のガソリン価格などに転嫁されるから、生活費を圧迫する。
もっとも、円安で輸入支払いが増えて国内物価が上昇することは、デフレ現象からの脱却を早めるという点ではプラスである。 いま政府や識者がしきりに主張しているインフレターゲットも、いってみれば国内物価を上昇させようということだ。 それには、円安による輸入物価の押し上げは大きな援軍となる。
気を付けないといけないのは、物価上昇が進んでも給与所得が増えないと、家計は厳しくなるということだ。 これまで、日本経済のじり貧が続き給与収入は下がり気味だったが、それ以上に諸物価がデフレ低下していたから生活はなんとか成り立った。
ところが、円安で輸入品中心に国内物価が上昇していくと、じり貧経済の弱さが一気に表面化する。 よほど早め早めで給与所得が増えないと、生活費の高騰は家計を直撃する。 それに対して、どう生活防衛していくのか? おそらく、多くの家計は無防備のまま輸入物価上昇の波にさらされるのだろう。
いまはまだ円安で輸入物価が押し上げられているだけだが、そこへ海外市場における資源や食糧などの価格が上昇し始めたら大変である。 相当な輸入インフレを覚悟しなければならない。 皮肉なことに、あれほど円高を嫌い円安待望論を述べてきた人たちの間でも、異口同音に円高への回帰を望むようになるのだろう。
まあ、為替はどう転がるか神のみぞ知るの世界であるから、まだまだ円安になるとか円高に振れるとかを論じるのは無しにしよう。 それよりも、国内物価の上昇や輸入インフレに対し、どう生活防衛していくかは待ったなしである。 給料はそう簡単に増えないとなれば、お金にしっかり働いてもらうしかないだろう。
インフレ対策というよりも、インフレの波に乗って資産を増やすという意味でも、株式投資の有用性を否定する人はいない。 それなのに、株式投資はリスクが大きいとかいっては逃げ回っている人がほとんど。 インフレになってから逃げ惑うよりも、今から長期の株式投資に踏み切っておく方が、よほど賢いと思うが如何だろう?
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