ネット証券大手2社に加え、日生アセットマネジメント社も、信託報酬ゼロの投信を出すようだ。
信託報酬をゼロ同然にまで引き下げれば、それだけ投信購入顧客の資産形成にプラスとなる。
いかにも、もっともらしい話のもって行き方である。 とりわけ、投信を販売する営業サイドにとっては説得力がある。
マスコミなども、すぐ反応する。 格好の報道材料とばかり、次はどこかとか詮索して止まない。
また、学者先生たちも信託報酬などの手数料が低ければ低いほど投資家顧客に貢献すると、以前から論じている。
どれもこれも、資産運用ビジネスをまったく理解していない、愚かな考え方と断じていいだろう。
愚かな考え方? どんなサービスにも、それなりのコストがかかる。
資産運用ビジネスにおいても、信託報酬をどんどん引き下げさせて、安っぽい運用に甘んじるのか。
それとも、ある程度はしっかりと運用報酬を支払って、たっぷりと実のある運用成果を期待するのか。
選ぶのは投資家の自由だが、安もの買いのゼニ失いという格言は尊重したい。
そもそも、運用ビジネスは高度に専門化した職業である。 医療にも匹敵するといっていい。
いわば、健康のドクターも、資産形成のドクターも、一生大事にしなければならない専門家である。
大いなる敬意をもって、しかるべき報酬をお支払いして、長くお付き合いするのが本来あるべき姿。
また、資産運用サイドも顧客の大事な資産をお守りしつつ、しっかり殖やしていく専門家としての矜持が問われる。
なのに最近は、学者先生までもが信託報酬は低ければ低いほど、投資家にプラスと主張して止まない。
どうして、そうなったのか? 実は、昨今は世界全体に資金運用が主体となってしまっている。
マーケットでの価格変動にどう上手く対応して値ざやを稼いでいくかが、資金運用である。
時々刻々の値ざや稼ぎの積み上がりをもって運用とするから、マーケットにどっぷりである。
だから、運用リサーチも必要としない、インデックス運用などが大流行するわけだ。
どちらにしても、各社それほど大差ない運用結果となる。 となると、残るは運用報酬の引き下げ競争となる。
それが、昨今の信託報酬の引き下げ競争につながっているわけだ。
一方、投資運用の世界ではある程度の時間軸でもって、それなりの運用成果を積み上げようとする。
そこに、運用能力の差が歴然と現れる。 まさに、専門家の世界である。
まして投信の場合、積み上がってくる基準価額の中には、信託報酬が既に引き落とされているのだ。
20年ほどたって、基準価額が年平均で6%とか7%で伸びていってくれていたら、どれだけ信託報酬を払っても投資家顧客は文句なしだろう。