ここ2週間ほど、米国の報道で最も熱を帯びていたのが、政府の債務上限問題であった。
それも、下院の採決を受けて上院の採決へと進んだことで、米国が史上初のデフォルトに陥る懸念は薄らいだ。
ただ、これで一件落着ということでもない。 たとえば、債務上限が一応は撤廃されただけのこと。
米政府が政策運営するにあたって一層の財政拡大は可能となったが、別の問題が待ち構えている。
それは、すでに金利が上昇してきているということだ。 ここまで、政策金利は5%も引き上げられた。
今後の財政運営に当たって、短期国債の発行などで資金を調達するが、5%前後の金利コストがついて回る。
5%の金利コストがかかるということは、それだけ放漫な財政拡大にブレーキをかけてくれる。
この自動的なチェック機能は、自由主義経済の良いところ。 だが、それだけ米政府の景気対策にも足かせとなる。
債務の上限が撤廃されたからといって、金利コストを意識すると、そう気楽に景気対策の財政投入はできない。
実際、ここまでの金利上昇だけでも、米景気や企業ビジネス活動には重い足かせとなってきている。
金利コスト上昇という足かせが、これから徐々に表面化してくるのは避けようがない。
すでに米国の住宅ローン金利は6%台から8%に上がってきていて、それが住宅関連や不動産業の経営を圧迫してきている。
先に米国の地銀3行が破綻に追い込まれたが、金利上昇という経営圧迫要因はずっと続いている。
いつ何時、またどの事業分野かは知れないが、大きな経営破綻のニュースが流れても、おかしくはない。
そのあたりを警戒しているのだろう、米国株の動きは鈍い。 債務上限問題クリアでも、株価上昇はほんのわずかである。
ひるがえって日本では、今日も株価上昇を囃しているが、ちょっとノー天気にすぎないのではなかろうか。
米国のように債務上限を懸念するどころか、国の財政はますます緩んでいるし、日銀も緩和姿勢を崩さない。
先進国で最悪の借金比率(対GDP比)を抱え、日銀の財務は日本のGDPの1.3倍と以上に膨らんでいる。
それでも、力まかせに金利を低く抑え込んでは、野放図に国債を増発している。
市場の声というか、経済合理性を無視しまくっているが、その限界と反動の危険度をまったく考えていない。
反動の危険度? 経済では行き過ぎは必ず反動を食らい、振り子は大きく逆に振れる。
放漫財政と無理やりの金利抑え込みを続けてきた。 その反動は、恐ろしく酷いものとなろう。
株価を含め、張りぼての経済部分のほとんどが吹っ飛ぶだろう。