一般的に株式投資というと、企業の利益向上を期待して、その株式を買うことになる。
その象徴が、昨年あたりまでの猫も杓子もの、GAFAMやテスラ騒ぎとなってくる。
超が何度もつくほどの高成長期企業で、利益成長スピードも図抜けている。
株価も天井を舞っていって、アップルなどは1社で日本の株式市場の時価総額に匹敵するほどの人気となった。
たしかに、企業がどれだけ利益成長するかは、株式投資にとって決定的な要因とされる。
ただしだ、われわれ長期投資家からすると、それで万々歳ではない。
どういうことか? 企業が利益を最大化させようとすると、売り上げを伸ばし利益率を上げるだけではない。
とにかく利益を捻出させるためにはとなると、いろいろな費用を削ることも視野に入ってくる。
費用削減で最大の項目は人件費である。 それで雇用を削ったり、海外の安い労働力を活用する。
その結果は? 国内の雇用を削れば、それが国内の消費を抑え、経済の縮小均衡につながっていく。
海外の安い労働力を活用する経営が激化していくと、新興国や途上国における低賃金労働の収奪につながる。
低賃金労働の収奪? 先進国の企業に利益を吸い上げられるばかりで、なかなか豊かになれない現象だ。
第2の費用削減は、企業が積極的な拡大投資を抑えることだ。 設備投資や研究開発投資を削り、賃借料や利子支払い費も減らす。
これら、対外的な支払い勘定が減る分だけ、企業の利益計上は増えるが、経済全体では縮小均衡の道を歩んでいく。
第3は、税支払いの圧縮だ。 各国での税体系の違いを利用(悪用)して、出来る限りの節税策を講じる。
たしかに、企業の利益は最大化できるが、国の税収入は減って、公共サービスなどに影響が出てくる。
これらの費用削減は、企業の利益向上につながるかもしれないが、経済全体からみるとマイナスとなる。
そのあたり経済全体への影響を、いつも強く意識しているのが、われわれ長期投資家である。
すなわち、企業は社会にどれだけ多くの富を生み出しているか、つまり付加価値の大きさでもって、その社会的な存在理由が問われる。
利益だけ大きければ、すべて良しではない。 人件費をはじめ、どれだけ多くの富を社会にもたらしているかだ。
そういった基準で、投資対象企業を選別していくと、案外と株式市場で人気化していない企業が中心となる。
それだけ、われわれ長期投資家は安値で買い仕込みできるケースが大きくなるともいえる。