マーケットには、いくつかの重要な機能を果たす役割がある。
先ずは、その時々の需要と供給の力関係を価格変動でもって調整する役割がある。
不特定多数の人々が、自由自在にマーケット参加して、それぞれの利益や目的を追求する。
このオープンさが、公平で公正な需給調整を可能とし、その力関係の均衡点である価格を世に知らしめる。
これを、価格発見機能という。 自由なるマーケット参加者による価格が適正な情報として、次なる経済活動を喚起する。
株価など時々刻々と変動するが、その裏には公平公正なる需給調整機能が働いているわけだ。
ここまでは、経済の教科書通りの、健全なるマーケット機能である。
ところが、昨今は健全なるマーケット機能を押しつぶした上での価格でもって、マーケットも経済も動いている。
ひとつは、リーマンショック以降、先進国中心に史上空前ともいわれる金融緩和を実施してきた。
そして、政策金利をゼロないしマイナスにまで引き下げた。
金融マーケットの崩壊や金融恐慌に陥るのを防ぐということで、これでもこれでもかの資金供給を実施したわけだ。
政府や金融当局が異常ともいえる資金供給でもって、株価や債券など金融商品の価格暴落を防いだ。
ふたつめは、リーマン後も景気浮揚に欠かせないと、株価上昇をサポートする金融政策を連発している。
いってみれば、米FRBはじめヨーロッパ中央銀行や日銀が胴元になっての株価上昇が続いているわけだ。
もっとすさまじいのは、日銀による株式ETF買いである。 すでに、37兆円も買い込んで、日本最大の株主に躍り出た。
通貨の安定に眼を配るべき日銀が、日本のGDPの1.3倍もに財務を膨らませて、ふんだんに資金を供給する。
無制限に資金供給できる立場でもって株高の胴元となり、その挙句に日本最大の株主としてマーケット参加しているのだ。
とりわけ、株式ETF買いなど、中央銀行としては考えられない行動までやってしまっている。
そういった、マーケット機能など無視というか、力でもって歪めてきた結果の価格形成が、ずっと続いているわけだ。
そういった価格でもって、年金など機関投資家は運用成績を追い求めているのだ。
どれだけ、不健全で人為的な株価や債券価格か、われわれ長期投資家からすると要警戒もいいところ。
ここへきての、世界的なインフレ圧力とそれに伴う金利の上昇は、実体経済が突き付けてきている刃である。
金利上昇という刃が、金融緩和バブルを破裂させようとしているが、これは人為に対する経済合理性の反撃である。
いかなる政府も中央銀行も、経済合理性には逆らえない。