米国はじめ世界の金融マーケットは、いまだカネ余りの余韻に浸っているようだ。
カネ余りボケといってもいい。 米国の政策金利が既に1.5%も引き上げられている。
来るFOMC(全米公開市場委員会)の会合では、さらに0.75%の利上げが予想されている。
都合2.25%の利上げだ。 つまり、米国の金利水準は2.25%も上昇してきているのだ。
これだけ金利が上がってきているというのに、マーケット参加者は落ち着いたもの。
それどころか、債券の流通利回り上昇つまり債券価格は下がっているから、むしろ絶好の買い場とする投資家が多い。
実際に、米国の長期債利回りは一時3.2%を超えていたのに、そういった債券買いで2.8%台にまで下がっている。
やはり、カネ余りボケというしかない。 あるいは、債券投資の怖さをまったく知らないからなのか。
さらには、金利上昇もそろそろ打ち止めになると読んでいるのかもしれない。
すなわち、インフレ圧力は来年にも静まっていくから、これ以上の金利上昇は景気を冷やすだけだ。
したがって、金利の引き上げもそろそろ一段落と読み、ここは債券を買うべしというのだろう。
ふたつの面からも、甘いと断じれる。 ひとつは、インフレ圧力がそう簡単には収まらないということだ。
たしかに米国のコロナ反動などによる需要増加がもたらしているインフレは、一時的な面が強い。
一方、世界のインフレ圧力はコストプッシュ型で、いろいろな要因はそう簡単には収まりそうにない。
エネルギー問題、世界のサプライチェーンの分断、地政学的リスク、賃上げ圧力などが相互作用をもたらしている。
コストプッシュ型のインフレを鎮静化させるには、思い切った金利引き上げか、景気の相当な冷え込みが効果的である。
ということは、金利上昇はまだまだ続くはず。 そう、債券相場は大崩れの方向にあるのだ。
もうひとつの面は、ここまでの金利上昇でも、ジャンク債など格付けの低い債券は足元が揺れ出している。
どこかで、ちょっと大きめのデフォルト(債務不履行)が発生するや、債券市場全般に動揺が走る。
そうなると、カネ余りボケは吹っ飛ぶ。 どの債券投資家も金利上昇の重みを、嫌というほど味わされる。
そして、いよいよ債券売りが目立ってくる。 それは、債券利回りの上昇を招き、さらなる債券売りへと連鎖していく。
そこから先は、債券市場の一方通行的な棒下げだ。 それにつられて、株式市場も暴落に入っていく。