世界の債券市場の雲行きが、じわりじわりと怪しくなってきている。
代表的な指標である、米国の10年物国債の利回りが取引時間中だが、いよいよ2.6%をつけてきた。
米FRBは、5月に予定されている理事会で政策金利を0.25%ではなく、0.5%の利上げをするといわれている。
ということは、金利の上昇傾向はまだまだ続くと見た方がいいのだろう。
パウエル議長はインフレ抑制を前面に出しているが、別の角度からも金利上昇傾向を捉えることができる。
それは、債券売りという側面だ。 債券売りという投資行動が、債券利回りつまり金利上昇を招く図式だ。
これまでのゼロ金利をいいことに、世界の投資家は超のつく低利回り債やマイナス金利の国債にまで買い群がってきた。
ところが、インフレ傾向が色濃くなってくるにつれて、保有している低利回り債券の投資妙味がどんどん薄れていく。
そうなると、少しでも利回りの良いものに乗り替えようとする動きが必ず出てくる。
つまり、保有している低利回り債を売って、より利回りの高いものへの乗り替えだ。
この乗り替え行動が、債券価格の下落すなわち債券の流通利回り上昇を引き起こす。
こちらの金利上昇は、米FRBなど中央銀行による政策金利の引き上げとは別物である。
いってみれば債券保有者による投資計算がもたらす金利上昇である。 より高い利回りを求めての投資行動の結果だ。
この動きは、軽くみない方がいい。 なにしろ、世界の債券市場は1983年からずっと上昇相場を続けてきた。
38年越しの上昇相場で、世界の債券発行残高は天文学的な規模にまで膨れ上がっている。
そして、ここまでのゼロ金利政策だ。 世界中の投資家はおそろしく巨額の低利回り債を腹一杯に抱え込んでいるのだ。
その保有債券の投資妙味が薄れてきたとみるや、途方もなく巨額の乗り替え行動に発展しよう。
この動きは誰も止められない。 投資家個々が投資計算でもって保有債券を売るのは、それぞれの勝手なのだから。
ということは、乗り換え売りの連鎖に弾みがついて、すさまじい債券売りを招くことにもなる。
今すぐとは言えないが、いずれ世界の債券市場は大崩れの地獄絵となっていこう。
もちろん、金利なかんずく長期金利はびっくりするほどに跳ね上がる。