マイナス金利と、家計貯蓄率のマイナスゾーン入り

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 日銀のマイナス金利導入が、どれだけデフレ脱却に効果を発揮するかは、いずれはっきりしてくる。 もっとはっきりしているのは、これでもかこれでもかの資金供給で、新たなるバブルの発生や将来のインフレの種まきが着々と進んでいることだろう。

 それはそれとして、おもしろい変化を感じる。 預貯金に凝り固まっている日本の個人や家計の間で、マイナス金利という言葉がちょっとしたショックを引き起こしているようだ。

 さすがに、預貯金までマイナス金利が課されることはなかろうが、マイナスという言葉が人々に預貯金の目減りを意識させている。 これまででも、ゼロ同然の利子しかつかなかったが、マイナスという言葉のイメージは、やはり違うらしい。

 結構なことである。 どうせ預貯金に置いておいても資産増加にはつながらないし、その預貯金マネーがどれだけ日本経済の活性化に寄与しているかは疑わしい。 それは、銀行の預貸率がずっと下がり続けていて、いまや68%台にあることが証明している。

 預貯金を預ける方は惰性で、預かる方は有効活用できないままでいる。 マイナス金利というショックが、その悪循環を断ち切ってくれるとありがたい。

 個人や家計が預貯金から長期投資へのシフトを、ほんの少しでも始めてみるといい。 これまでの預貯金オンリーの生き方が、どれほどもったいなかったかを知らしめさせられる。

 もうそうなると、預貯金から株式市場への資金シフトはどんどん加速する。 それは日本株市場の恒常的な上昇トレンドにつながり、ますます預貯金からの資金流出を促す好循環となる。

 実は、マイナス金利の他にも個人マネーの株式シフトを促す要因が出てきている。 それは、家計貯蓄率が2014年にマイナスの0.3%と、いよいよマイナス圏に入ってきたことだ。

 日本の家計貯蓄率はずっと大幅なプラスを続けてきた。 それが、個人金融資産を大きく積み上げる要因となったわけだ。 ところが、1990年代に入ってからというもの、家計貯蓄率は下降トレンドを加速させて、ついにマイナス圏に突入したのだ。

 この事実は重い。 これまでは、毎日の生活で余ってきたお金を預貯金などに積んでいけた。 それが、いまや余るどころか不足の世界に入ってきた。

 そうなると、個人それぞれが選択を迫られる。 いまの生活を維持したいのなら、預貯金を崩すしかない。 あるいは、預貯金を後生大事に抱え込んで、いまの生活水準をどんどん下げていくかだ。

 人間だれしも、いまの生活を下げたくはない。 となると、これからは預貯金残高の急激な減少が、恐ろしい現実となってくるわけだ。

 そういった現実が身近に迫ってくれば、もう否応なしで預貯金離れが進む。 多くの日本人の間で、いよいよ投資とりわけ株式投資に向き合わざるを得なくなる。

 どうして、株式へのシフトと言い切れるのか? 皆さんいろいろな投資に手を出すだろうが、長いめでは長期の株式投資が一番だと実感する。 というか、いろいろな投資の提案を受けるだろうが、どれも時間の経過とともに消えていくからだ。

 ここまで書いてくれば、もうお判りだろう。 われわれの長期投資の方へ、時代がどんどんすり寄ってくるのだ。 とにもかくにも、長期投資のピッチを目一杯に引き上げておこう。

 今夜から、イタリア出張します。 次回の長期投資家日記は、25日(金)となります。

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 ★注意 上記の内容は澤上篤人個人の見解であり、さわかみ投信株式会社の考えおよび「さわかみファンド」の運用を説明しているものではありません。 個人の真意を尊重するため、原則、文章の修正はせずにブログを公開しております。